少し開けた窓のカーテンの隙間から


南国のような妙に甘い匂いの


むせかえるような暑い風が


部屋に入ってくる



鎖骨の下に貼りついた


下着の不快さに耐えながら


京子は団扇を動かして


終わりのない


我慢大会の様な暑さに埋没していた



午後2時過ぎ


遠くで郵便配達のバイクの音が聞こえている




“チリン” とどこかで涼しげな


風鈴の音がしたと思ったら


いきなり目の前が真っ暗になり


京子はいつのまにか熱いアスファルトの上に


裸足で立って


熱波で揺らぐ景色を見つめていた





道のど真ん中に立ち尽くし


動けないでいると


やがて空から雨粒が落ちてきた




ポツポツと降り始めた雨は


時間を置かず


すぐに激しいスコールになった




バケツをひっくり返した様な激しい雨


ほんの一瞬で


京子の視界に入る全ての景色は


辺り一面が


広大な池の様になってしまった



水面をよく見ると


次々と広がっていく波紋の中で


時折、真っ赤な小さな金魚が跳ねていた





「カラン」



グラスの中の氷が溶けて


小さな音がして


京子は我に返った




そして、氷の浮かんでいる


薄いカルピスの入ったグラスを額にあてると


目の前に見事な入道雲が立ち昇っていた