その夜、谷田貝翔は久しぶりに
吉田といつもの居酒屋で落ちあった
吉田と付き合いはじめてもう数年になる
吉田が荷物を抱えて席に着くと
谷田貝は店員を呼んでビールと
肴を幾つか適当に選んで注文した
吉田と初めて会ったのは
近所のアウトレットモールの中にある
靴屋だった
谷田貝は滅多に見ず知らずの人に
気さくに話しかけるような男では無かったが
その日にかぎっては、吉田につい話しかけた
吉田は同じ靴の箱を二足脇に抱えてレジに
並んでいたが
よく見ると箱に書いてあるサイズが
1センチ違っていたから、、、、
「 兄弟の分かなんかですか? 」
谷田貝が何の気無しに聞くと
「 いや両方俺のっす 」
吉田はめんどくさそうに答えた
しばらく飲み食いして
お腹が膨らんできたタイミングで
二人はお互いの荷物を取り出して
慣れた手つきで物々交換をした
「 しかし不思議な縁だよね
左足が1センチ大きい男が
右足が1センチ大きな男と出会うなんて 」
二人はお互いの同じ品番の靴を
見せ合いながら笑った