ある日男は小高い丘にある


住宅街の道路の上で目覚めた


すぐ横に自転車が倒れている


昨夜は飲みすぎてしまって


そこで寝込んでしまったようだが


何故そこにいるのか全く記憶が無い


よく見れば倒れたママチャリのかごに


携帯が入っている


男は携帯を取り出して


充電があと39%残っているのをみて


少し安心したが、そう言えば手帳型のケース


に入れて使っていた筈がいつのまにか


裸のままになっている


まあ、使えればいいのだけれど、、、




男は最近転勤で


この町に引っ越してきたばかり


この住宅街が町の何処ら辺なのかわからない


とりあえずGoogleマップの検索履歴を見ると


現在地から少し離れた場所に


それっぽい場所が保存してあるので


それがきっと自分の家だろう


「さてと」


二日酔いで目がくらくらするが


何とか自転車を起こしてマップを頼りに


走り出す


何の変哲も無い見た目のママチャリは


思いの他軽快に走る


男は調子に乗ってペダルを漕いだ


坂を下りながらはじめてこの町の全景を見る


遠くに海も見えていてなかなかの眺めだ


そうか、こんな町だったのか


男は嬉しくなって二日酔いの気分もどっかへ


行ってしまった


しかし、


どうやって自転車を手に入れて


こんな坂を登ったのだろう


考えては見るが何一つ思い出せない


「まあどうだっていいや」


男は片手でブレーキを握り


ひんやりする空気を吸い込みながら


町に向かって走って行った