えっ? 何かお話をしてくれ?


由美ちゃんさぁ もう10歳だっけ?


寝る前にお話なんて歳じゃ無いでしょう 


なに? スマホばっかいじってたら


親に取り上げられた? そんで退屈?


おじさんには関係ない話だね


おじさんの子どもの頃は


スマホどころかケータイも無かったからね


由美ちゃんくらいの歳の頃は


スーパーカーとかキン肉マンの消しゴムを


必死で集めてたっけ


そうそう


近所に住んでたひとつ歳上の女の子が


よく遊んでくれたな


おじさん運動音痴で外で遊ぶのが苦手で


その子とばっかり遊んでたな


名前はなんだっけ?弓子だったっけ?


由美ちゃんと同じようにゆみちゃんと


呼んでいたよ


でも、そのゆみちゃんは親の転勤で


おじさんが5年生になる前に


引っ越して行ったよ


引っ越して行く前に大事にしていたお人形を


おじさんにくれた


でもおじさん、キン消しにしか興味が無かったから


人形は机の上に放って置いた


ある日


夜寝る時になんとなく人形が


こっちを見てる気がして


気持ち悪いから後向きに置いてベッドに入る


真夜中にふっと机の方を見ると


後ろ向きに置いた筈の人形が


こっちを見てる気がして灯りを点けると


やっぱ後ろ向きに置いてた、、


そんな事が何回かあって


だんだん薄気味悪くなってきて


とうとう


ばあちゃんが裏庭で焚き火をした日に


その火の中に人形を放りこんだ


夕方、火が消えた頃合いに見に行くと


体は燃え尽きて


焼け残った人形の首だけが転がっていた


おじさんは怖くなってその首を掴んで


小川まで走って行き


それを思いっきり遠くまで投げた




やっぱり大事な人形を捨ててしまって


申し訳ない気持ちだったからか


その夜おじさんはゆみちゃんの夢を見たよ


ゆみちゃんは顔を伏せて目を合わせてくれない


いつの間にか辺りは火に包まれても


ゆみちゃんはじっと動かずに


とうとう服に火がついて激しく燃え上がった


おじさんはうなされて目が覚めたよ


それで心を落ち着かせようと


キン消しをしまっている


机の引き出しを開けると


水びたしの


黒こげの


人形の首が、、、、、、






おかあさーん