年に一度の地区の用水路の泥さらい


せっせと作業してるうちに


体のあちこちが痛みだす


もう若くはない


余計な力が入った部分には


きっちりとオマケまでついた痛みが走る



それでもまだこっちは50代半ば


この地区では


ハナタレ小僧の扱いだ


足が痛いなと思ったら


履き慣れない長靴の中で


親指に靴ズレが出来ていた


水ぶくれが潰れて


赤い皮膚が剥き出しになっている



ふと若い頃の事を思い出す




確か社会人になったばかりの頃


まだ大学生だった彼女が


社員寮のあった東大阪まで


会いに来てくれた


同じ大学の部活の2年後輩だった


私が先に卒業して就職したので


しばらく会っていなかった




瓢箪山の駅で待ち合わせ


そのまま近くの居酒屋へ入った


軽く白く濁った水槽の中で


チヌと名前を知らない魚達が漂っていた


何を飲んで何を食べたのか


もう覚えてはいない


ただ歩き疲れて


ヒールを脱いだ彼女に足の踵に


酷い靴ズレが出来ていて


こんな足で1日歩き回っていたのかと


驚いた記憶だけが残った





長靴の中で親指が激しく痛み


足を少し動かすのも苦痛になって来た


だが、どうしようもない


周りは高齢者ばかり


作業を代わってもらうわけには行かない



そうか


こんな感じだったのか



私は口を結んで


あの日の彼女の靴ズレを思い出しながら


せっせと泥をすくった