夜中にふと目を覚まし


ジッと耳を澄ませる


静寂になればなるほど


巨大化する耳鳴り


その喧騒の中に


手探りで探す虫の声


ほんの一瞬


キリギリスかクツワムシか


ガチャガチャという声を拾って


少しだけ安心する


漠然とだが


虫の声が聞こえなくなった時に


日本人はみな


消えてしまう妄想に囚われている


しかし


あの賑やかだった虫達は


何処へ行ってしまったのだろう?




もう一度ジッと耳を澄ます



部屋に掛かった安物の時計が


何となくぎこちない感じで


針を進めている音がする


カチコチカチコチ


一音一音が同じ音ではなく


不揃いな感じが


血の通った生き物のようで


ほんの少しだけ


寂しさが紛れる気がする



それでも寒かった季節が


通り過ぎていっただけマシさ




夜が明けるのもずっと早くなった