その日私は


業界でもかなり偉い先生を車に乗せて


市内を走っていた


もう先生とは5〜6年の付き合い


とは言えいつものように


背中に物差しを突っ込まれた様に


ピンと張り詰めてハンドルを握っている


こことあそこと交差点を曲がれば高速に乗れる


私は先生を送り届ける道筋を頭の中で


シミュレートして


到着の時間に狂いが生じていないか


何度も確かめながら走った



やがて予定通りの時間に


先生ご希望の店に到着した




接待など日常茶飯事の先生


今日は豪華な食事ではなく


先生のご自宅の近くで


同級生がやっていると言う


小料理屋で軽く一杯やりたいと


ご所望されていた


こじんまりとして


実にアットホームな店だった


席に着くと


ひどく懐かしい曲が流れていた


曲名だけで鮮やかな色彩が浮かぶ様な、、、



そして、接待と言うより同僚達と


ふらっと暖簾をくぐる様な店の雰囲気に


私は緊張で張り詰めていた糸が


いつのまにか


プツッと切れてしまった様だった


一杯二杯と御相伴にあずかるうちに


あろう事か仕事を忘れ


気づけば先生の隣を離れ


少し離れた席で私は酔い潰れていた



そして呼ばれる声で目を覚ませば


店の女将が早めに店を閉めて


先生と近所の店で飲み直す


算段をしている所だった




「お前も行くか?」と聞かれ


「 いいえ、私は結構です 」


などと言えるはずも無く


私は慌てて脱いでいた上着を羽織った


だが、なんか違和感がある


私はネクタイもシャツも脱ぎ散らかし


裸の上に上着を着ようとしていたのだった


私は急いで上着を脱ぎ


シャツに腕を通そうとした


だが焦れば焦るほどシャツは身体に


まとわりついて、うまく着れない


何故か頭の中でさっきの曲が


ローテーションしている


私は店の外に待たせている


二人の姿を想像しながら


ひたすらもがき続けた