このところ私はちょっと浮かれていたに違いない


そうでなければそんなくだらない話に


耳を傾ける事なんてなかったはずだから





私に辛くあたっていた


上司が左遷された


私の所属する部門の


営業成績が悪かったのが直接の原因だが


最後までその上司は


全てを私のせいにしようとしていた



だが上の人間から見れば


そんな事はどうでもいい


部門長を切れば単純に格好がつく話だから





私はウイスキーを買って


定時を待たずにビジネスホテルにしけ込んだ


そしてホテルの部屋の窓際に腰掛け


それをちびちびやりながら


昔、テレビで観た


刑事ドラマのオープニングのような


夕陽を見つめた






その男とは


週末の公園で出会った


男はベンチに座り


明らかにチューンが合っていない


雑音のする古くさいラジオを耳にあてて


じっと聴いているようだった

 

今思えば、何でそんな怪しい男に


話しかけてしまったのかわからない





何も喰わずに飲んだせいか


私は程無くして気分が悪くなり


その場にぐったりと倒れ込んだ





真っ暗な部屋で私は


ちょうど日付が変わる頃に目が醒めた


そして洗面台で顔を洗い


ベッドに戻って


備え付けのラジオのツマミを捻って


あの男に聞いた周波数に合わせた





「ピー ギュリィー ギュルー  、、、」




あの男が言うには


それで私は数年前に亡くなった


祖母と話が出来るはずだった




しばらく待ってみたが


暗闇の中、何も起こらない




「何が霊界ラジオだ」


 


私はまんまとかつがれた自分自身を


揶揄するように低い声で呟いて


ベッドに倒れ込んだ






翌朝、見事な二日酔いと共に私は目覚めた


そして髭も剃らず服を着替え


よろよろとホテルを出た


こんな状態で運転して


もしお巡りさんに見つかったら


一瞬そんな思いが頭をよぎったが


もうそんな正常な判断を下す理性など


残ってはいない


私はホテルの駐車場に駐めていた


営業車に乗り込みエンジンをかけた





「 、、、やめなさい、、、」






「 えっ? 」




カーナビのラジオから


聞き覚えのある小さな声がしたと思ったら


私は真っ暗な部屋の中に戻っていた



そして部屋の中には


まるで息をする様な


ラジオの小さな音だけが響いていた