その日私は鳶色の瞳の少年に会った
少年は隣町の何の変哲も無い
古いアパートに母親と暮らしていた
私がその少年の存在を知ったのは
かつてのバンド仲間の話がきっかけだった
そいつは十数年前、演奏中に突然倒れ
担ぎ込まれた病院でいろいろ検査すると
身体のあちこちに癌が見つかった
まだ若かったので進行がとても早く
周りが呆気にとられるくらいにあっさり
余命を宣告されてしまった
その後そいつはプイと何処かにいなくなり
消息を絶った
先日、十数年ぶりに
夜の繁華街でそいつにばったり会った
私は思わず
足がちゃんとあるかどうか確かめた
あれから時が経った分だけ
髪が減ってはいるが
いたって元気そうな顔だった
私は毎年、会社の指定の医療機関で
健康診断を受けていた
もう歳も歳だからと
今回初めてオプションの腫瘍マーカー検査
をしたら膵臓癌が疑われ
その後の精密検査ではっきりわかった
「 親戚の子なんだけど変わった子でさ
ほんと今だに何がどうなったのか
わかんないんだよな 」
私は同じ病気で他界した父親の
治療に苦しむ壮絶な最期を知っているだけに
バンド仲間の話に一縷の望みを託した
アパートの部屋で少年に向き合うと
少年は私の胸の前にそっと掌を当てて
しばらくじっとしていた
それからボソッと
「 ごめんなさい 僕には解け無いです 」
少年とは少しだけ話をした
少年は人の気の流れのようなものを
見ることができると言った
それが絡まっている部分に不具合があり
うまくほぐせる事も有るけれど
私の場合は固結びのように絡まっていて
どうする事も出来ないと、、、
帰りの電車の中
私は半分落胆し
残りの半分で自分の始末の事を考えた
どうすればこんな雁字搦めにならずに
生きる事が出来たのか
鳶色の瞳に語りかけてみたが
答えは返って来なかった

