そうね
私はもう結婚は諦めているよ
あれよあれよという間に
もう40を過ぎ
子どもを持つには
ちょっと遅すぎる様にも思うから
10年前には身の回りの
おせっかいな人達が
いろいろと縁談を持って来たものだけれど
なんかぐずぐずしてるうちに
私の周りは
嵐の後の様に不気味な静けさで
もう私が生涯独身を貫くのは皆にとって
既定路線になっている様にすら思える
これでも
たまに街中で見かける異性には
ちょっとドキドキしたりもする
ついこの間だって
道玄坂で営業用の車と思われる
ハッチバックの後ろのドアを
両手が荷物で塞がっている男性が
足で蹴って閉めたただそれだけの事で
私は目が釘付けになり
彼がもし私のパートナーだったら
私に人並みの女性としての
健康的な悦びを
与えてくれるに違いないと妄想して
自分でも少し恥ずかしくなったばかりだ
でも妄想するのは無料だから
それも今宵の晩酌の肴みたいなもんさ
私は自宅マンションのベランダで
ちょっとキツめの缶チューハイを飲みながら
ぼんやりと夜空を眺めている
バタン
ハッチバックのドアが閉まる音が
繰り返し胸の中で響いた

