このところ目が霞む



近くにも遠くにも微妙にピントが合わず


何かを見つめるだけで酷く疲れていた


その日もそんな感じで


スマホをいじっているうちに


いつのまにか寝落ちしていた




早朝の公園


まだ真っ暗な時間


いつものように犬の散歩をしていた



霞む目を気にしながら


犬の動きを追っていた



すると街灯の灯りで伸びた自分の影が


ゆらゆらと直角に起き上がり


こっちを向いた


そして影は犬に覆いかぶさる様にして溶けた



犬は私をスッと背中を押された位の引力で


引っ張って歩いた


いつもの散歩コースの景色が微妙に


違って見えたが


かと言って全く見覚えの無い景色でも無い


私は霞む目をこすりながら


歩く道は犬に任せた



やがて狭い路地を抜け


なんとなく見覚えのある


小さな家の玄関の前に立ち止まった



玄関の灯りで犬から伸びた影が


スッと私の足元に溶け込んだと思ったら


私は影に引っ張られる様に


玄関を開け小さな家に入っていった



ところどころが軋んで


今にも踏み抜きそうな床を


そっと歩いて中に入ると


ちゃぶ台の上にあさげが並んでいた


ご飯に味噌汁、、白菜漬け、、、目刺し


なんとも言えない懐かしい匂い



子どもの頃 


祖母が用意してくれた食事の匂い、、、








愛犬に顔を舐められ


目が覚めた



台所から味噌汁の匂いが漂ってきた




枕もとに転がっているスマホで時間を確認する


しばらく悩んでいた霞目は


すっかり消えていた






さて


散歩の時間だ