喫茶ラムネ






冬場は店の中で


昔、学校の教室に置いてあったような


丸型ストーブが活躍中です




しばらく居座っていた寒波が通り過ぎて


日中は少し暖かく


感じられる様になった日の夕方


そんな丸型ストーブのような


まる顔の彼女が店にひょこり現れた










「 この近くに美味しいカレー屋さんが


  あるんですけど、マスター知ってます? 」




彼女がいつにも増して


とびきりの笑顔でそう聞いてきた



彼女は少し前にひとつ歳下の彼氏と別れ


ここで愚痴をこぼして行ったのに


今日はニコニコとご機嫌な様子





「 そこのカレー屋さん


いつも人が並んでいる人気店で、、


あっ、いや


このお店がいつもお客が少ないって


言いたいわけじゃ無いですよ、、 」





彼女の話によると


そのお店の人気の秘密は


かくし味の秘伝のペーストで


材料は内緒で教えてくれないけれど


いろんな食材を3年以上かけて


じっくり発酵させて作ってるって


シェフに教えてもらったとの事



今日のお昼に


最近付き合い始めた


新しい彼氏とふたりで


そのお店に行ったらしく


蘊蓄込みの美味しいカレーを食べて


すっかりご機嫌で


この間の失恋話も何処へやら




“  シェフもかくし味と言いつつ


  ちゃっかり宣伝しちゃって、、”



マスター、チラッとそんな事が



頭に浮かんだけれど 


彼女の笑顔の前に


すぐに掻き消されて


つられていつの間にか自分も


つい笑顔になっていた




“ どう見ても本当のかくし味は


その新しい彼氏の方だと思うけど、、”




マスターは彼女のカップに


コーヒーのおかわりを注ぎながら




「 いいなぁ〜 かくし味かぁ〜 」





猫が伸びをするような声で




2回おんなじ言葉を呟いた