誰かに「大嫌いだ。」と言いたい夜。

月は丸く星は霞む。

誰かに「死んでしまえ。」と言いたい夜。

すれ違う電車の窓越しの会釈。

誰かに「****。」と言いたい夜。

世の中には素敵なことがたくさんあるのに素敵だと思えない。



世の中にあるものすべて素敵だと思っているし実際そうだし

 あるところにひとりの男がいた。彼には奇妙な収集癖があった。綺麗なもの、素敵なもの、好きなものをすべて自分の周りに置いておくのだ。もちろん、ただそれだけなら奇妙ではない。誰もがすることだ。奇妙なのはその保存方法だった。彼は集めたものを氷のような特殊な物体でコーティングするのだ。それは触っても冷たくないし溶けることもない。コーティングの方法、物質については彼だけが知っていた。

 始めに彼はいろんな物をコーティングした。擦り切れたサイコロ、ママからもらったハズレの宝くじ、好きな子から盗んだ消しゴム、そんなものだった。
 次に彼は生き物をコーティングし始めた。金魚すくいでとった金魚、ペットのハムスター、ぬいぐるみみたいな犬、彼に懐いたノラ猫、そんなものだった。彼らはコーティングされた後も不思議そうに目をぱちぱちさせた。
 しばらくして彼は人間をコーティングし始めた。初めて好きになった女の子、大親友と言ってくれた男の子、毎朝キスをしてくれる妻、彼の双子の娘、そんなものだった。双子は父親である彼の目から見ても見分けがつかなかいくらいそっくりだった。二人はとても仲良しだったので、彼は二人を一緒にコーティングした。コーティングされた人たちはみな不思議そうに彼を見るのだった。

 彼の周りには彼にとって綺麗なもの、素敵なもの、好きなものでいっぱいで、息がつまりそうだった。コーティングされた表面が太陽にあたってピカピカ光り、彼の目は潰れそうになった。彼の顔は既にいくつものシワでいっぱいだったが、コーティングされたものはいつまでたってもそのときのままだった。物体たちはただただ不思議そうに目をぱちくりする。ただ双子だけが、たまに面白そうに笑うのが聞こえた。彼にはもうどっちがどっちだかわからなかった。

 彼はある日それらを金づちで割っていった。ちらばった破片はもうどれが何のものかわからなかった。破片の眼球は瞬きするのをやめた。最後に双子の片方の顔を金づちで叩いたとき、大きな破片が胸に刺さって彼は死んだ。割られなかった双子の片方は瞬きをひとつしてコロコロと笑った。

自己満足。

身につまされる言葉だ。

僕のこのブログも自己満足である。

誰にも聞いてもらえない気持ちを誰にも伝えない思いで書いている、くだらない自己満足だ。

しかし僕のこの自己満足は誰にも迷惑をかけていない。

僕は他人に迷惑をかける自己満足が大嫌いだ。

演劇、芸術、文学の上で。

誰もが見るものであるのだから、楽しませるという精神はなくてはならない。

一部の人にしか受けないアングラ方面はもうまっぴらだ。

そんなのただの自己満足だろう?

いかにももっともらしい言葉で飾り立てて。

受けてはちっとも楽しめない。

そんなものは糞くらえだ。


だからこんなにかなしくなるんだろう。