これまでのあらすじ

 

(8)描かれなかった魔王東丈の謎と、VSルーフとジン

『幻魔大戦 Rebirth』は実によく練られた作品ですし、その点で大満足ですが、それでも欠落した、描かれなかった部分はあります。
そのひとつが、東丈の闇落ちのその訳です。奉翔族〈イル=クラートゥ〉の船で帰還した東丈は、幻魔が喜ぶダークサイドへと堕ちていました。幻魔を憎みつつも、その憎しみがあまりにも激し過ぎ、味方の巻き添えもお構いなしに、ノヴァ現象を放つその姿は、元の彼ではありませんでした。ソニーをして「幻魔以上に恐ろしい何か」と云わしめますが、その理由、プロセスについては、最後まで明らかにされることはありませんでした。

魔王東丈(第43話)
――第43話「東丈の帰還III」より

それは紙面の都合だったのでしょうか。ウェフ連載と云えど、無制限ではなかったでしょう。与えられた尺に限りがあったとすれば、そこをつぶさに描いているゆとりはなく、割愛せざるを得なかったのかもしれません。
もうひとつ、平井和正にさえわからなかった謎に、答えを出すのことが憚られたのではないか? とも考えられます。

ワタシは勝手に「ルシフェルモード」と呼んでいますが、東丈は時折「闇落ち」をします。
その代表例のひとつは『新幻魔大戦』の魔人正雪です。自らの大望のあまり、幻魔と盟約を結び、結果乗っ取られ、お時の強力な敵に回ることになりました。
いまひとつは、『ハルマゲドンの少女』における大教団の教祖、金髪碧眼の東丈です。後述する、ルーフとジンが出逢い、因縁をもたらした彼は、このイメージで造形されているようです。
その金髪碧眼の東丈について、著書のあとがきで平井和正はこのように述べています。

 

 東三千子は、金髪の美青年を、〝反キリスト〟と看破してのけます。サタンにより権威を与えられた〝獣〟――新約聖書中の『ヨハネの黙示録』で預言されている悪の救世主として、金髪の美青年は登場するのです。
 しかも、それが東三千子の最愛の弟、東丈であるとは、いったい何を意味しているのでしょう。言霊によって導かれながら、作者である私にも理解を絶するシーンです。
――『ハルマゲドンの少女』あとがき「ハルマゲドンの始まり」より


ルーフとジンが東丈に出逢うのも、『幻魔大戦 Rebirth』が初対面ではありませんでした。彼らは以前に別の世界で「魔王東丈」に出逢っており、その際、それまで行動をともにしていた、ダーや仲間たちと、はぐれています。彼らは東丈に対する因縁と憎しみを抱えて登場しました。しかし、そのことも僅かに触れただけで、詳しくは語られていません。

 

――魔王東丈を倒すために…
――第42話「東丈の帰還II」より


魔王東丈(第52話)

――第52話「虎の檻IV」より。「髑髏都市の章」で合流した仲間たちも、ここまでは一緒でした。

にも関わらず、ルーフとジンは東丈と戦うことなく、エッちゃん――猿飛エツ子の仲立ちにより休戦しています。見たかったな、彼らの勝負を――とは、正直思います。

紙面の都合はともかく、それでも描くわけにはいかなかった、という事情があったとしても、わかるような気はします。これはおもしろ過ぎる。〈幻魔大戦〉というメインテーマを喰い、バランスを崩しかねない。物語そのものを傾けてしまう重みをそなえています。それこそ、8マン対009になってしまいます。

余談ですが、振り返れば『8マン・インフィニティ』の第2部は、〈幻魔大戦〉そのものでした。

発表されなかったその第2部の設定資料が、電子書籍の『8マン・インフィニティ』第6巻巻末特典に収録されています。1st=ジョウ・コズマ(!)、2nd=ハントレス、3rd=大江&ソフィアのナンバーズのコンセプトは「天使」。対する9th=ダンガーらのそれは「悪魔」。併録された七月鏡一の「未完の物語について」に語られた談話もそのことを裏書きしています。

『8マン・インフィニティ』で果たせなかった創作欲求が『幻魔大戦 Rebirth』に繋がり、そこで描けなかった、平井和正VS石ノ森章太郎のモチーフが、さらに『8マンVSサイボーグ009』へと実を結ぶ。考えてみれば、「東丈」とは、「東八郎」と「島村ジョー」の、それぞれの姓名をいただいた名前ではなかったか。まるでバトンを繋ぐようにリレーされる、創作の連鎖――。こんな妄想に耽るのも、なかなかに面白いですね。

 

(9)それでも〈幻魔大戦〉は終わらない

この物語のラストのラスト。連載5年に渡る物語の大トリを飾ったのは、なんとドク・タイガーでした。ニューヨークの摩天楼の暗がりで呑んだくれくだを巻く彼の頭上で、夜空に浮かぶドクロ月が不気味に見下ろしている……。

 

誰が忘れるものかよ…

ドク・タイガーだけは……!
――第66話「終章 約束の扉」より


納得!!! その一語に尽きます。物語としての幻魔大戦が大団円を迎えても、この宇宙から幻魔が滅びることはなく、幻魔大戦が終わることもない。

『幻魔大戦 Rebirth』という作品によって、マガジン版『幻魔大戦』に始まるシリーズのメインストリームが完結を迎えました。でもそれは、全てのピースが埋め尽くされ、「完成」したということではありません。
そもそもそんなことは、物理的に不可能です。無限の空間、無限の時間、そして無限の多重世界に広がっているのが、幻魔大戦という戦いの舞台だからです。ワタシたちは、そのなかの限られた幻魔宇宙の片隅にスポットが当たり、物語として語られる、それを鑑賞しているに過ぎません。

新たな幻魔大戦の物語の創作、創造の余地は、限りなくあります。
現存する作品に限っても、ピースを欠いたままの、未完の物語はいくつもあります。『新幻魔大戦』のその後、小説『幻魔大戦』・『ハルマゲドン』のその後、『真幻魔大戦』に至っては、現代篇、上代篇、異世界篇、それぞれが途上のままです。
リュウ版『幻魔大戦』にしても、明治時代に「跳んで」から、『幻魔大戦 Rebirth』の世界にたどり着くまでの道のりは語られていません。ことに「魔王東丈」との対決など、それだけで大作たり得る物語を予感させ、だからこそ『幻魔大戦 Rebirth』には盛り込めなかったのは仕方ない。こう考えましょうよ。掘り起こされていない、これは鉱脈であると。


たとえば『真幻魔大戦』には、こんな一節があります。

ルナ王女は求愛ができない性格の持主であった。丈に対して配偶者になることを求める時ですら、命令せずにはいられない滑稽さを示し、ユーモアの乏しい性格ゆえに王女自身ひどく傷つくことになったのだ。
――『真幻魔大戦(7)』「幻魔からの脱出」より

ルナが丈に求婚!? それも命令!?(笑) されてみたいわぁ、そんな命令。ハイッ、プリンセス、仰せのままに! もちろん、マガジン版『幻魔大戦』に、こんなシーンはありません。平井せんせいも、さすがにそこはわかっていたでしょう。同時並行で執筆していた小説『幻魔大戦』は、とっくに「GENKENパート」に入っていたと思いますが、これを書くつもりでいたのでしょうか。小説『幻魔大戦』に……?
事実として、このシーンが小説『幻魔大戦』に書かれることはなく、現存する全ての幻魔シリーズに、こんなシーンはありません。これもまた、欠けたピースです。実際、平井和正せんせいソロの幻魔シリーズは、こんなところだらけです。それにふくれっ面で愚痴をこぼすか、チャンスがザクザク埋まっているネタの金山と思うかは、あなた次第です。
「ルナ」がいて、「ソニー」がいて、早瀬ベガがいた『幻魔大戦 Rebirth』の前の世界では、そんなひと幕があったのかもしれませんね。ふたりの間には、ステラというれっきとした娘がいるのですから。

 

まったく手つかずの時空、新しい物語としては、たとえばこんなのも考えられます。
1967年の『真幻魔大戦』世界を舞台にした、幻魔のげの字も出ず、戦いもない、平山圭子と田崎宏のラブストーリー。
遠い昔、遥か彼方の銀河で繰り広げられる――GENMA WARS。

なにも新作に限ったことばかりではありません。なんと小説『幻魔大戦』のGENKENパートの漫画化に取り組んでおられる方もいて、それがアマゾンで電子書籍として無料配信されています。

 

 

これは本当に意義深いことだと思います。なぜかと云えば、小説『幻魔大戦』という大作をワタシのように愉しんで読める人ばかりではないからです。あの早瀬マサトせんせいでさえ、この小説を読むのを避けた――そう聖帝サウザーが云ったとか云わないとか。興味はあるけど、正直活字の本を20冊読むのはキツい。内容的にちょっと……。そう思ってる人、漫画になってるの? なら読んでみようかって人は多いのではないでしょうか。これは一種のマンガアカデミーですよ。マンガ「罪と罰」、マンガ「戦争と平和」みたいな。早瀬マサトせんせいが描いてくれたら、それこそ「マンガ幻魔大戦入門」ですけどね。

※ただのネタであることを謹んでお詫びし、お断りしておきます。

 

逆もアリでしょう。漫画作品を小説化(ノベライズ)する。小説『幻魔大戦』はご存知のように、マガジン版『幻魔大戦』の小説版ではなく、平井和正がまったく様相の異なるヒューマン・ストーリーに分岐させてしまいました。そのノベライズを、今度こそ「まとも」にやってみようという。これぞまさしく「シン・幻魔大戦」。いまだに誰もこれに手をつけていないのが、不思議なくらいです。『コミック版「幻魔大戦」原作ストーリー』が前半部分しか公表されなかったのも、きっと天の配剤であろうと思うのですが。我こそはと思う方は、トライしてほしいと思います。平井・石ノ森両せんせいの霊と、ファンの生霊を怖れずに。

※公表された原作原稿『コミック版「幻魔大戦」原作ストーリー


このような平井和正、石ノ森章太郎の手を離れた、幻魔大戦トリビュートの気運、潮流が起ころうとしているのではないか、そんな予兆を感じます。その起爆剤となったのは、云うまでもなく『幻魔大戦 Rebirth』です。

(10)幻魔大戦五十年を紡いだ運命の糸

平井和正は漫画『デスハンター』を『死霊狩り』として「まとも」に小説化しています。※1 作家としての「能力」の問題として、マガジン版『幻魔大戦』のまともな小説化が、できないはずはなかったのです。歴史に「もし」を考えるのは不毛ですが、仮に小説『幻魔大戦』がGENKENの登場しない、まともなノベライズとして完結していたとしたら、『真幻魔大戦』の様相もまったく違っていたはずですし※2、おそらく「deep」も「トルテック」もなかったでしょう。そして、マガジン版『幻魔大戦』が小説決定版によって完成されていれば、『幻魔大戦 Rebirth』もまた誕生の余地はなかったのではないでしょうか。
※1 ちなみに『死霊狩り』2・3巻が発表されたのは、平井和正の「神がかり」が顕著となった『人狼白書』の発表とほぼ同時期ないしその後です。
※2 『真幻魔大戦』の青年作家・東丈は、小説『幻魔大戦』4巻に「中学生時代に三島由紀夫調の習作を書いたことがある」と書かれたことから生まれました。

⇒参照 アダルト無印幻魔大戦!?~「預言教団」「超霊媒」真幻魔大戦(8)


作者である七月鏡一、早瀬マサト、お二人の功績は、善し悪しはどうであれ起こってしまった現実に立った上で、智恵を絞りベストな結果を手繰り寄せた、努力の賜物以外の何物でもありません。身も蓋もなく云えば、天才だけど作品を投げ出しがちな作家と漫画家の不始末を、まともな秀才型である二人の「弟子」が、始末をつけたということです。
誤解なきようお断りしておきますが、天才>秀才なんていう序列はありません。両者は性質でしかなく、50の天才がいれば、100の秀才もいます。平井和正が(「ガラスの仮面」の)北島マヤ(憑依型の霊媒)だとすれば、七月鏡一は姫川亜弓(職人芸の匠)だといっても、まんざら過言ではないでしょう。よくこんなのを考えたなと思います。そして、平井和正には決して書けなかっただろうな(笑)とも。

『幻魔大戦 Rebirth』の最終巻では、あの「ドクロ月」――月の異常接近が再現されます。ここで想像上のハサミを取り出し、チョキチョキと第65話「ハルマゲドンV」以降を切り取って、マガジン版『幻魔大戦』のお尻にくっつけたら、すごくコンパクトな完結する幻魔大戦が出来上がりかと云うと、ことはそう単純ではありません。

マガジン版『幻魔大戦』の東丈は、成長したとは云っても、まだまだPKのアキレスでしかありませんでした。平行世界の月とすり替えるなどという離れ業を演じることに説得力をもたせるには、それ相応のプロセス、遍歴が必要でしたし、なにより多次元宇宙の概念の導入が不可欠です。
『新幻魔大戦』と称して、時代劇を描く!? よく云や天才、悪く云やアタマおかしいんじゃないの? という平井和正の異次元の発想。そこを起点に開花した幻魔宇宙のビッグバン。平井和正の膨大なシリーズなくして、『幻魔大戦 Rebirth』のあっと驚くクライマックスも、成立の基盤を持ち得ませんでした。

この幻魔大戦五十年の歴史を眺めると、そこに「運命の糸」とでも呼ぶしかない、不思議な何かを感じ、敬虔な気持ちにならないではいられません。
思い出してください。マガジン版『幻魔大戦』で、シグが口にしたこの科白を。

 

ふはははは
――マガジン版『幻魔大戦』より

 

月をぶつけるのを「第一の挑戦状」なんて云うシグにも驚きですが、それ以前にこの漫画、打ち切られるんですよ!? 「第一の挑戦状」なんて言葉が、どうしてこの時点で出てきたのでしょうか……?

(11)さあ、幻魔宇宙の旅に出かけよう!

ワタシもこれを機に、幻魔大戦アベンジャーズの個々の物語、石ノ森章太郎の未読の漫画の数々、「ジュン」を、「サブ」を、「エッちゃん」などなどを読んでみようと思います。それらを知らないことで、まだまだ見落としていることも沢山あると思います。なによりそれらの作品も、幻魔の出てこない幻魔大戦ですからね。

逆に石ノ森章太郎がらみの漫画しか知らないひとが、「履修」として平井和正ソロの幻魔大戦を読むと、かなり「異質」な印象を持つのではないかと思います。マガジン版『幻魔大戦』に足場をおいて平井和正の幻魔大戦を眺めれば、ファンであるワタシの目から見ても、クセの強い平井和正性とでもいうものに偏り傾いた、異端、傍流、変化球であったと思います。
※「履修」……聞くところによると「名探偵コナン」を愛好する女子が、元ネタを学習するために「機動戦士ガンダム」を鑑賞することをこう呼んでいるそうです。
けれども、それらも幻魔宇宙の多重世界に存在する物語です。だからこそ、七月鏡一は『幻魔大戦 Rebirth』を石ノ森章太郎の漫画世界だけでクローズすることなく、平井和正の幻魔大戦をも取り込み、久保陽子を、ドナーを、杉村姉妹を、田崎を、クローノを、イチエを登場させ、GENKEN主宰の東丈、青年作家の東丈を、多世界の東丈の姿として垣間見せました。

俺は東丈だ!!

――第42話「東丈の帰還V」より

 

平井和正の幻魔シリーズをはじめとする、あらゆる関連作を事前に読み、知っておくことが、ベストな『幻魔大戦 Rebirth』の読み方なのか? ワタシはそうは思いません。
平井和正の幻魔大戦を知らずにこの作品を読むことは、「何も知らない真っ白な東丈」と同じ立ち位置で物語に入っていくことができるわけで、それはそれで、それならではの味わい、愉しみ方ができると思います。それは読者それぞれの巡りあわせというものであって、たったひとつのベストや正解があるわけではありません。
お金と時間となにより意欲のある方は、東丈が取り戻した「記憶」を追う、冒険の旅に出てみてはいかがでしょうか。無数に折り重なる幻魔宇宙には、こんな世界が、戦いが、物語があったのかと発見することになるでしょう。

『幻魔大戦 Rebirth』という、正統・本流の主軸がしっかりと通ったことで、それらの枝葉、支線にも、あらためて眼を向けてみるゆとり――これは「違う作品」だけれども、これはこれで、これも幻魔宇宙のひとつなんだと思える余裕――も生まれるのではないかと思うのです。平井和正を伝道するハシクレとしても、その意義は大です。やはり、正統あっての異端、本流あっての傍流、直球あっての変化球です。

マガジン版『幻魔大戦』とは違うけど、これはこれで青春宗教キャラ萌え小説「道玄坂46」として愉しめるよな、みたいな。

それとも平井和正ファンとして、ここは「やめておけ」と警告するのが、分別ある態度というものでしょうか?(止めたって、読むやつは読む)
GENKENには手を出すな! ってね。こんだけ長いテキスト書いといて、それが締めかよ!……ガン(エッちゃんの金だらいが頭に命中)

 

――第52話「虎の檻IV」より

 

【各巻ダイジェスト】

 

『映像研には手を出すな』も漫画はまだ継続中だったかと思いますが、もはや懐かしい感じです。こんなオチで終わるのもあんまりなので――というわけではありませんが、付録としてダイジェストを載せておきます。

この作品は、読者に記憶力を要求します。登場したキャラが、その前はどこでどうしていたか覚えておくことが大事なのです。
一例をあげます。三千子の身を案じた丈が〈エリア51〉を飛び出します。ベガ・ステラ・ソニーの三人も彼を追います。一方、東京で三千子はサブとともに〈神話同盟〉に捕われ、彼らの本拠である西洋風の城(トランシルバニアかと思いきや、場所は奥多摩の山中)に攫われます。丈とベガらはそこにたどり着き、そして丈は気を失い、目を覚ますと、そこは「三千子の存在しない世界」でした。そこでも様々なことがあり、縄文土器そっくりの空飛ぶ島へと導かれます。
……こう書いていても、なかなかの急展開にめまいがしそうですが(笑)、ところでベガら三人はどうしていたのか? 東丈を探し回っていたのです。当然、〈神話同盟〉本拠からは、東丈は消えています。なので、三人は丈の行方を追った。こうして丈のもとに、ベガ・ステラ・ソニーの三人は現われるのです。……その再会の喜びも束の間、丈は〈時舟〉で異世界へと連れていかれるのですが(笑)。こういう描かれていないキャラの去就を押さえておくと、この作品をより愉しめると思います。

 

お父様――ッ!!

――第30話「見知らぬ世界VI」より


自分で実際に「あらすじ」を書いてみて、整理することで、そのことを強く感じました。これはその自分用の資料に手を入れたものです。パラレルワールドあり、異世界あり、『真幻魔大戦』顔負けの舞台転換が、目まぐるしく展開し、ワタシのような記憶力乏しい人間には、なにがどうなって今ココにいるのかがわからなくなってしまう(笑)。「地図」も持たない無手では、迷子になってしまいます。
あらすじを一巻150字以内の縛りを設けて書きました。なので本当に「粗い」ですが、これぐらいのほうが、かえって大まかな流れを捉えやすいのではないかと思います。

 

1巻 第1話「グランド・プロローグ」/第2話~第6話「東丈」
かつて「月」であった天体の破片に眠り[前の世界]を追憶するサイボーグ戦士ベガ。ルナの娘・ステラはベガとともに、別の時空の地球へ向かう。[再会]した東丈は[前の世界]の記憶を失くしていた。だが、久保陽子を駒にする〈幻魔〉との戦いを通じて、徐々に[前の世界]のことを知ってゆく。

 

2巻 第7話~第9話「ソニー・リンクス」/第10話~第12話「ニューヨーク黙示録」
ニューヨークは幻魔の隕石攻撃により壊滅する。ソニー・リンクスはジョージ・ドナーの指揮する対ESP作戦チームに捕われ、ザメディの虜に。東京で丈の眼の前で消えたステラが、ニューヨークに出現する。ソニーとステラを救うべく、ベガが駆けつける。丈もニューヨークへ飛び、ザメディとの[再戦]が始まる。

 

3巻 第13話「ニューヨーク黙示録」/第14話~第17話「時空の管理人」/第18話「嵐の中の邂逅」
ザメディを倒した丈ら超能力者たちは、杉村由佳により〈エリア51〉に迎えられる。丈は幻魔化したブルックナーの襲撃を退け、星間種族のリロから〈太陽の戦士〉の預言を聞く。管理人イワンの警告で姉・三千子の身を案じ、帰国を急ぐ丈は、同じ姿をした[彼]の挑戦状を受ける。

 

4巻 第19話~第24話「東京戦線」
意識を失くした丈は、異世界のルーフとジンの戦いのヴィジョンを見る。東京では東三千子に魔の手が迫っていた。サブは彼女を護衛するも、ラミルカ率いる〈神話同盟〉の手に落ちる。月影の助けで脱出したサブは、ダミアンとの戦いで瀕死のダメージを負う。東丈の眼の前で三千子は炎に包まれる。

 

5巻 第25話~第30話「見知らぬ世界」
そのとき[何か]が起き、丈は無事な三千子と再会するが、目を覚ますとそこは三千子の存在しない世界だった。青林学園での戦いのさなか、浮遊物体に引き込まれた丈と杉村遊奈は、田崎忠ともに〈クロノス〉を目撃する。ドク・タイガーに操られた米空軍の爆撃により〈時舟〉が姿を現し、丈を乗せて飛び去ってしまう。

 

6巻 第31話「東丈の消失」/第32話~第36話「幻魔領域」
エリア51ではドナーたちがダミアン率いるサイキック狩り部隊に襲撃される。ステラはリロたちに東丈の捜索を依頼する。時舟が不時着したのは、獣人の世界だった。丈はダミアンの顔をしたその地の王・ギルと陸上戦艦で〈幻魔の領域〉へ向かう。そこでギルの顔をした集団〈雲の人〉に襲われる。

 

7巻 第37話~第40話「幻魔領域」/第41話~第42話「東丈の帰還」
雲の人から逃れた丈らは、〈幻魔の牢獄〉で竜族の子ガモンを助け、囚われのマ王に遭遇する。ギルは囚人たちの力を集め、〈幻魔樹〉を破壊する。クロノスを解放した丈の前に、リロたちの迎えが訪れる。対ESP部隊に追われていたソニーとナオミは、ルーフとジンに窮地を救われる。

 

8巻 第43話~第45話「東丈の帰還」/第46話「幻魔経済入門」/第47話~第48話「悪霊の王女」
帰ってきた丈は、元の彼ではなかった。丈にスミスが近寄るが、猿飛エツ子の助けで撃退する。[救世主]として目覚め始める丈の前に[彼]が現れ、東丈はすべての記憶を取り戻す。ダミアンは「経済的」に地球支配を目論む幻魔と手を結び、〈アニマ〉を宿す少女・ジルと組む。サブは気付く、「東丈は二人いる!」と。

 

9巻 第49話~第54話「虎の檻」
丈はソニー、サブらと合流、ルーフとジンとも和解する。一方、ドナーら囚われのサイキックは、ドク・タイガーの管理する収容所に投獄されていた。自ら囚人として潜入したクローノは、イチエらと共闘して反乱を起こす。そこへ東丈も現われ、囚われのステラを解放する。それを見つめる親友・ジュンがほくそ笑む。

 

10巻 第55話~第57話「集結の時」/第58話~第60話「黒き竜」
丈はソニーやサイキックたちの力を結集し、ベガの援護も得て、ドク・タイガーを倒し、収容所を脱出する。ジュン=[彼]の正体は、宿敵シグだった。シグの宣戦布告を堂々と受けて立つ丈を仲間たちも祝福する。世界中で激化する幻魔の侵攻。幻魔ゼムドとの戦いで窮地に陥る丈を黒き竜・ガモンが助ける。

 

11巻 第61話~第65話「ハルマゲドン」/第66話「終章 約束の扉」

もうひとりの東丈は三千子だった! そうして三千子を隠し守り抜いた東丈は、シグとの最後の決戦に勝利する。シグは幻魔の中枢で裏切りを罰せられながらも、地球侵攻作戦を抹消する。地球は平穏を取り戻した。だが、ドク・タイガーがくだを巻くその頭上から、ドクロ月が不気味に見下ろしている……。

 

初出一覧

2020.05.23 第1回

  (1)まんが祭りか、公式シリーズか?

  (2)遠い日の約束
2020.05.30 第2回 (3)ベガの「モデルチェンジ問題」を考える
2020.06.07 第3回 
(4)「語り直し」の失敗
2020.06.13 第4回 
(5)“絵”で考える幻魔シリーズの質的変遷
2020.06.21 第5回 (6)待望の「本線」開通

2020.07.04 第6回 teabreak ~ 東西ウルフガイ夢の競演! ~

2020.08.01 第7回 

  (7)リュウ掲載版とのリンクと終結!

  teabreak ~ 「支配」と「破壊」の幻魔対決、ゼムドVSシグ! ~
書き下ろし 
 (8)描かれなかった魔王東丈の謎と、VSルーフとジン

2020.08.10 第8回 (9)それでも“幻魔大戦”は終わらない

2020.08.15 第9回

  teabreak ~ 『幻魔大戦 Rebirth』の哲学的テーマ ~
  (9)それでも“幻魔大戦”は終わらない(承前)

2020.08.22 第10回 (10)幻魔大戦五十年を紡いだ運命の糸
2020.09.05 第11回
 (11)さあ、幻魔宇宙の旅に出かけよう!
書き下ろし 【各巻ダイジェスト】