すみません。号泣しちゃいました。歳を取ると涙もろくなっていけませんが、特に子供はダメです。
芦田愛菜には正直、あまりいい印象を持っていません。実はもっとしっかりしているのに、あまりしっかりし過ぎているところを見せつけると、かえってオトナは引いてしまうことをわきまえていて、子供らしい天真爛漫さを演じている、そんな計算高さが感じられてならない。

今田「芦田愛菜ちゃんがまさかの一言!? 何と云った?」
〈ジャン♪〉
芦田『あの使えないAD、クビにしてよ~』
今田「愛菜ちゃ~んッ、そんなコト言っちゃダメ~ッ(泣)」
板尾「これはいいでしょう(笑)」(アンテナ3本)
〈初段昇格!〉


そんなケータイ大喜利のアンテナ3本獲得の投稿ネタをリアルに云っていそうで油断がならない。
もちろん、そんなことを噂にすら見たり聞いたりしたわけではなく、ただの個人的直観・印象に過ぎない。愛菜ちゃんにすれば理不尽な話だ。悪く思わないでほしい。子役スターであるというだけでそんな印象を持たせてしまった、ケーキ屋けんちゃんやマコーレ・カルキン君や杉田かおる姐さんら諸先輩方を恨んでほしい。

それでもドラマの中の芦田愛菜が、そんな負のイメージ(あまり一般的ではないでしょうが)をものともしない、一流の女優であることは間違いない。
あらすじはネットショップのDVD紹介でもご覧いただくとして、子供達だけの冒険が、子供であるというだけで、困難と障害に満ち満ちた、文字通りの冒険になる。都内から長野県・小海までの電車の乗り継ぎ、そこからバスで大学病院(そこに仲良しの友達が入院している)への道のり。大人なら、別にどうということもない。大人が演じる冒険譚はだからこそ、SFの域にまで荒唐無稽にならざるを得ない。そうでなければ、冒険として成立しないから。
子供であるからこその非力と枷。所持金も乏しく、携帯電話も持たず、世間知に欠け、にも関わらずナイショの行動ゆえに大人を頼りにできない――。その状況が、ごく日常的な社会をドラマチックな空間に変える。切符の確認に訪れる車掌さえも、芦田愛菜ら一行にとっては“敵”なのだ。

このドラマを観たそもそもの理由は、例によって満島ひかりさん目当てだったんですが、こんなガキ相手の仕事やってらんねー、もっと割のいい仕事ないかしら、的な不良先生役を好演しています。仕事をサボって煙草プッカ~ッとフカしている隙に、受け持ちの園児達に《脱走》をされてしまうわけです。
最初は「面倒起こしやがって」と思いながら園児を追う満島先生でしたが、脱落した園児をひとりひとり保護していくうち、次第に心境が変わってゆく。最後には、芦田愛菜と共謀して夜間の病院に忍び込むまでになるのですが、その変化も見どころのひとつです。

個人的には、芦田愛菜の母親が小西真奈美だったのが感慨ひとしおでした。小西真奈美が母親役かと。マナミがマナの母親やってるよ。おれも歳取ってるわけだよなあ。

題材曲『さよならぼくたちのようちえん』を園児達が歌うクライマックの卒園式、画面にエンドロールが流れるなか、ここでまたダメ押しに泣かせるんですよ。泣かせるのに子供と動物を使うのは反則の極みなんですが、これはホントよく出来てる。2時間ドラマで忘れ去られるのはもったいない。愛菜ちゃんファンだけでなく、一人でも多くのひとに観てほしい。
子供っていいよね。傍で見ているぶんには。言っちゃいますが誰も死なないし、幸せな気持ちになれる作品です。
 

 

2011.07.10 初出 mixi

再掲(日時不明)

2023.09.10 一部修正・変更

引用して使用するのに伴い修正・変更しました。ちなみに泣かせるのは主演の芦田愛菜でなく、満島ひかりでも、ブレイク前の本田望結でもなく、佐藤瑠生亮くん(もちろん子役時代)。母親を恋しがる子供には、そりゃあ泣くって。