角松敏生にとっての中山美穂。それは、杏里と並んでプロデューサー角松敏生の名を不動のものとしてJーPOP界に楔を打つものであると同時に、男性が考える女性心理を女性目線で歌い上げるスタイルの最高峰であったということである。

 

1988年2月は今にして思えばバブル絶頂期。その週のオリコンチャートで角松敏生がワンツーフィニッシュを果たした。

「角松史上初の、オリコンチャート1位を獲得する!」との号令の下、制作広報陣が総動員かけ、マンパワーのみならず恐らくかなりバブリーなコストを注ぎ、満を持して角松敏生が世に放ったのが「BEFORE THE DAYLIGHT〜IS THE MOST DARKNESS MOMENT IN A DAY」。これが何とオリコン週間チャート2位になってしまった。1位はこの、中山美穂「CATCH THE NITE」、角松敏生全面プロデュースである。後に角松さん本人も、「自分が自分のせいで自分に負けた」みたいに自虐っておられた由縁である。

 

 

昨晩、中山美穂の訃報が報道ステーションで流れた際、多くの楽曲が流れた後で、トリをを〆たのが角松作品の「You're My Only Shinin' Star」通称「ユアマイ」に乗せての、角松敏生のコメントだった。

 

ミュージシャン・角松敏生さん

 私の中の中山美穂さんは10代のままです

 音楽が大好きで努力家だった記憶があります

 

(12月6日放送 報道ステーション内)

 

音楽に厳しいことで知られている角松敏生。レコーディングの際、杏里を泣かせてしまったことは有名だが、中山美穂も泣かせたそうだ。

角松の女性ファンとしては、角松があのミポリンをプロデュースと聞いてやきもきしたものだったが、確かJJ(女子大生御用達ファッション雑誌)あたりの中山美穂と角松の対談で、角松がミポリンのことを「さるとびエッちゃんみたい。妹的存在」などと今思えば極めて失礼な表現で、恋愛対象ではない匂わせ発言をしていたので、ホッとしたのを覚えている。令和に「さるとびエッちゃん」で通じる人がいるのか問題はさておき。

 

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CATCH THE NITEは、1988年当時に華の女子大生だった私にとって角松のアルバム以上に、朝から晩まで狂ったように聞き込んでいたバイブルだった。というエピソードを、過去このブログで何度も何度も披露してきたと思う。あの頃、私の生活の全てが、角松の曲だった。

 

あれから40年近く経った今、改めて聞くと、「この当時のアルバムは一本のライブの順番にストーリーとして作られていたんだな」ということが良く分かる。かつて角松は「曲を飛ばして聴いて欲しくない、我々は1つの作品として、順番も計算して作っているのだから」と言っていたものだが、1曲目のOVERTUREからラストの花瓶に至るまで、全てが連続した作品として完成されている。

 

 

1.OVERTURE~2.MISTY LOVE

当時の角松が多用していたOvertureからのノンストップでダンスナンバー。このOVERTUREはメロディラインが同日発売の角松アルバム「BEFORE THE DAYLIGHT」収録「REMEMBER YOU」のサビ部分と同じだということは角松ファンには分かる。そしてこのメロディ、アルバムを最後まで聴くと分かるのだが、ラスト曲に繋がっている。

 

 

 

3.TRIANGLE LOVE AFFAIR

作編曲が佐藤博!ホーンセクションが、角松プロデュースのSWEET INSPIRATION(佐藤博)ぽく、これまた角松ファンを狂喜させる。

親友の彼氏に思いを寄せている女子と、彼と親友の3角関係がどうなったか…「三角の関係は角度をなくし今はあなたと私向き合っているわ」上手い喩え。

 

 

 

4.SHERRY

10代だった中山美穂に、うんと背伸びさせて歌わせた大人な曲。角松ってよくこんな無茶振りを女の子にさせてたような気がする。自分の理想の女性像を押しつけたい角松のちょいSな部分に萌えていた女性ファンっていっぱいいたと思う。

 

 

 

5.スノーホワイトの街

大人の女性から一転して可憐な少女へ。アルバムの箸休め的な存在感。同じく佐藤博作品。

 

 

 

6.CATCH ME

最早説明不要の大ヒット曲。こちらはジャドーズのオ~ヤァ!の掛け声から始まる方じゃないイントロで、よりビート感を強めて疾走する。

今でも角松ファンは、ライブでイントロが流れるとアドレナリンが一気に放出されて条件反射で乱舞します。

 

 

 

7.JUST MY LOVER

角松が当時傾倒していたTHE SYSTEMっぽいイントロから始まる、スタイリッシュなダンスナンバー。

実はこの曲、ミポリンがアルバム中一番好きだと言っていた曲。アルバム中最も危険な香りがする曲で、令和であれば不適切にもほどがあり、間違いなくコンプライアンスに引っかかって発禁になるだろう。詳しくは私の過去記事で詳述してたと思う。

 

でも、はっきり言って、私はこの曲が大好きだ。アルバムの中で一番沢山聞いた曲。多分、1000回は聞いている。

 

 

8.FAR AWAY FROM SUMMER DAYS

JUST MY LOVERからのこの曲への流れが秀逸すぎて悶える。「恋が終わり、今は1人で2人の頃を思い出している」という角松お馴染みド定番の「追憶」パターンを、「女性目線で」歌い上げているバージョンになる。そして夏、海。角松ファンならDNAレベルで好きな「別離と夏と海」の三点セット、切なすぎる旋律。

 

はっきり言おう。私は、全角松プロデュース作品中、この曲が一番好きだ!

 

 

 

9.GET YOUR LOVE TONIGHT

アルバムバージョンのCATCH MEから掛け声を奪われた一方で、一曲丸々任されたジャドーズ。ご存じ、ジャドーズアルバム「a lie」でよりご機嫌なダンスチューンに生まれ変わってカバーされている。

 

 

 

 

10.花瓶

私はこの曲の「元ネタ」を読んだことがあるのだ。ビッグコミックスペリオールだかスピリッツだかの読み切り漫画からヒントを得て作った曲だと公表されているが、その漫画、私は美容室でたまたま読んでいたのですね。

ヒロインはコールセンターで働いていて、たまたま誤って男の電話に繋がり、そこから同棲。その先は曲の歌詞通りで、自分勝手な男性に振り回されて別れを決意、今思えば男性、普通にクズ男ですね。だけど結婚式でふと男を思い出し、「あなたの部屋の電話を鳴らすのは(取る方だったかな?ちょっと失念)、私しかいない」と、男の部屋に戻る…というストーリー…だったと思う。

 

 

 

 

あれから40年近く経った今、この曲を振り返れば、「身勝手な男の願望」と、「そんな男を支えられるのは私だけという女の陶酔」が見事に合致した、大いなる幻想だろうなぁと思うしかない。決して「女心を歌い上げた」ものではなく。

 

それでもこの曲は、いや、この全曲通した1つの作品は、間違いなく1988年の若者たちが紡ぐ恋愛ストーリーの指針となり、象徴であり、バイブルだった。

 

そういえばあの頃、私たちにとっては「恋愛」が全てだった。全てのヒットソングはラブソングだった。アルバム丸ごと全曲、恋とか愛を歌っていた、それがあの頃だったんだ。私たちはそんな曲たちに育てられて、生き抜いてきて、今もこうして、生きている。

 

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