7回以上に亘ってお送りしてきました司法浪人生ポエム。「司法試験受験生」がいつのまにか「司法浪人生」になっていたり、「コラム」が「ポエム」になっていたりするが気にしないで欲しい。

 

最終回は、約6年前に「司法試験以外、全てを棄てる」と決意して以来、朝、勉強場所に向かう途中から、勉強中から帰宅するまで約半日間、常時耳元で奏でられる音楽も「司法試験の為の音楽」として選択され演奏されるようになってしまった結果、私のプレイリストはどうなったか・・・という話である。

 

この6年間、不動のプレイリスト第1曲目は、秦基博の「Rain」。

新海誠「言の葉の庭」のクライマックスのこの画面をバックに流れる、あれである。

 

 

 

1日2回プレイするとして2×365×6=4380回。気が遠くなるような再生回数だ。

 

「Rain」に続き、RADWIMPSの「君の名は。」「天気の子」と、新海誠ワールドに浸りながらいつものスタバに向かう。

地下鉄の階段を上がり、陽光眩しい空を仰ぎ見ながら、私の一日が始まる。

 

それが私のこの6年のルーティンだった。

 

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多分2×385×6=4380回以上、見てきた風景

 

King Gnuの「飛行艇」という曲が、格闘技における入場ソングとして相応しいとネットで見たので、DLしてみた。

 

 

確かにこの曲を聴きながら勉強していると、絶対に勝てる気しかしなくなる。時代を制覇するキング感が半端ない。本試験中に自分が神であるという錯覚に陥ったのはこの「飛行艇」を聴きすぎたからなのかもしれない。

 

集中力を高める為にBGMを聴きながら勉強する受験生は多いが、何故かクラシックが良いとされている。

しかし孤独な司法試験受験生に相応しい曲は、自分を奮い立たせる為の戦闘曲である。羽生結弦選手も試合前にONE OK ROCKを聴いているという。その曲はバラードではない筈である。やはりビートが魂に響くような攻撃的な曲でないと。

 

かつて聴きまくっていたのは中田ヤスタカの「ライアーゲーム」のテーマ曲である。大金を賭けた頭脳騙し合いゲーム映画のテーマソングであるから、いかにも司法試験受験勉強時のBGMに相応しいような気もする。

 

 

 

そのうち「財産」を賭けた頭脳ゲームに飽き足らなくなり、人生を賭けた命懸けの知的格闘遊戯たる司法試験に相応しいのは、「生命」を賭けた頭脳ゲームではないかと考えるようになった。そう、「賭博黙示録カイジ」の映画版、「カイジ 人生逆転ゲーム」である。

 

 

しかし司法試験は博打ではない。カイジの真似をしたら確実に人生棒に振る(もう既に振ってるじゃないか・・・というツッコミは勘弁して欲しい)。

 

 

昔、坂口憲二主演の「医龍」という医療ドラマがあった。

 

天才外科医の坂口憲二は、誰も成功しないような超絶ムズい高度な手術日の前夜、病院の屋上でたった1人、オペのシミュレーションをするのだ。空手か合気道だかの「型」のようなオペの動作を、何故か上半身裸で一心不乱に鬼気迫る勢いで、手で空を切って練習する。

 

翌日の本番オペ、先ずは開胸してみてビックリ想定外の状態の悪さに〝こ、これは…〟と一瞬絶句するも、冷静かつ瞬時に計画を変更してオペに着手するのがお約束。あとはタイムリミット内に機械的に猛スピードで次々とメスを振るい、途中必ず生じる想定外の緊急事態にも天才的な閃きとチームの協力により瞬時にして乗り切り、超絶ムズいオペを見事に成功させる…というのが「医龍」における鉄板の展開だ。

 

 …これって、司法試験と同じじゃないか?

 

前夜、オペの動作の「型」を練習し、本番シミュレーションを怠らないのは司法試験の「答練」に相当する。本番では答練でのシミュレーション通り、システマティックにスピーディにメスならぬペンを振るう。お約束の想定外の緊急事態「問題文を開けてビックリなんじゃこの突然の出題形式の変更は!」にも冷静かつ瞬時に計画を変更し、あとは2時間以内に機械的に猛スピードで次々とペンを捌き、最強バディ「法文」の協力もあって超絶ムズい問題を見事に叩きのめす…というのが司法試験である。

 

というわけで私はこの「医龍」のサントラをDLし、オペシーンに流れるビートの効いた戦闘曲を勉強のお供として聴いていた。

 

5:56からのDRAGON RISESが特にお勧め!

ペンを振るうこの右手は、首を擡げた神龍と化して火を噴き

白き答案用紙を真っ黒に焼損し尽くすのだ

 

もっとも「医龍」では翌日のオペの内容は予め詳細に分かっている。司法試験で分かっているのは「明日は民事系」とかいう科目名のみであり、「明日は心臓のオペやります」とだけ言われているようなものである。

CTもMRIもなく、心臓のどのようなオペになるのか、開けてみないと全く分からないのが司法試験であるのに対し、坂口憲二、問題文を事前に漏洩されているようなものじゃないか。

 

だから予め全パターンのオペのシミュレーションをしておかなければならない司法試験受験生の方が、「医龍」の超天才外科医・坂口憲二より遙かに凄いと思う。

 

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司法浪人生は、いつも空を見上げながら歩くのだ。

いつも自分を越えよう、越えて往こうと自らを奮い立たせているからだ。