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散り果てた花を見る者などなく

咲く花のひとひらを見る者もない

 

けれど ひらりひらり舞いながら散って逝く花片

それはまるで、この世に生を受け、芽吹き 蕾となり 

薄紅の絨毯を天に広げ謳歌しては、盛りを過ぎ往き

そして散り逝かんとする者の、

最期の舞いにも似て

ここにいるよ ここにいるよと云いながら・・・

 

光を受けてキラキラと閃きながら 風に吹かれて舞い踊る者もいれば

強き風に抗っては必死に手を延ばしてしがみ付き

やがて力尽き 空に千切れゆく者もいる

だけどほとんどが、誰にもその存在を認められぬまま

ただひっそりと散り落ちる者ばかりだろう

 

人は、いかに美しく咲く有様を見せたかでその価値が決まるのではなく

花を散らし、地に舞い降りて朽ち果て、

その樹の糧となり豊穣な大地を創ることで、

次世代の生命に身を捧げること、

すなわちいかに豊かな朽ち果て方ができたかで、その価値が決まるのではないだろうか

あたかも雪が溶けて水と化して 大地に沁み渡り潤して新たな生命を創り往くように

ほんの僅かなひとひらであっても、その気高き魂は

尊きこの世界を創ることができるんだ

 

花の美しさなど儚く 心捉えるのも刹那に過ぎず

それよりも我が身を大地に捧げ 永遠の生命に廻り還したいと

そんな風に咲き 散り 舞い降り 朽ち果てて往きたいと

わたしは君に何ができるだろうか

君に何を遺せるのだろうか

 

 

君の肩に雪が降る 約束の桜の雪が

君が去りゆく径に はらはらと舞い降りる

君に降り注げ 君に届け

 

 

 
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