角松敏生のライブがなければ、今年という年は終われない。そういうライフサイクルになっていたのは、いつの頃からだろうか。角松の12月のライブは、ファンにとっての「ゆく年くる年」。ジャラーンとかき鳴らされるトシキのギターは、我々にとってのゴーンと響く鐘の音だ。
夏には本田雅人率いるビッグバンドの豪華絢爛極まりない音とビジュアルにひたすら圧倒されたライブツアー〝BREATH from THE SEASON〟であった。軽井沢、音霊、〝お前と俺〟ツアーを経た終着駅はここ、中野。どんなライブになったのか?
最近の年末の中野は、「一年を振り返る」ライブメニューであり、ディープなファンであればある程、ラインナップの予測が付くものになっている。安定の定番メニューの中に数皿、意外なお皿が提供され、これが驚きと共にファンにとっては何よりのご褒美と、強く印象づけられる逸品となる。
しかし今年は、すべての曲が憎いのだ。最後に簡単なメニュー(セットリスト)を掲載するが、字面だけ見れば、不動の定番メニューに過ぎないだろう。
ところがところが。これはオープニングの「月のように星のように」の後の一曲目からEncoreまで、全て、ビッグバンドで演奏されたのである。
どういうことかというと、「食材は同じものを使っていても、出来上がった食のジャンルが全然違うものになってしまう」ということである。
たとえるならば、オリジナルが和食だとすれば、この日のビッグバンドバージョンはイタリアンだ。オリジナルがエスニック料理だとすれば、この曲は高級フレンチだということである。
ビッグバンドで味付けされた〝IF YOU・・・〟、オリジナルはバブル期初頭の丸の内から銀座界隈のワンシーンだった筈だが、この日脳裏に繰り広げられたのはまさしく摩天楼の夜〝A Night in New York〟だ。
〝TAKE IT AWAY〟のなんと小粋で煌びやかな、揺れる男の下心。
「全然、別のジャンル」を決定付けたのが、その揺れまくる男の下心〝OSHI-TAO-SHITAI〟。トシキの「これ、ビッグバンドで聞いてみたくないですか?」の一言でスタート、めくるめく金管楽器の饗宴は、下心さえも〝洗練〟された大人の世界を魅せてくれる。
初恋、AIRPORT LADY、SHIBUYA、Girl IN THE BOX、たたみかけるダンスナンバーも、全て今までの曲と「別物」ですからね!
トドメは待ってました、キュートなあんにゅのボーカルに耳キュンチューンが止まらない〝A Night in New York〟!「舌鼓」ならぬ「耳鼓」が鳴り止まないのである。
この唯一無二の素晴らしいフルコース。Produceは角松で、シェフは、素晴らしい料理人を引き連れたSAX本田さんじゃなかろうか。
IRON CHEF、本田雅人!
(お名前が隠れてますが、ANRIさんからのお花がありました)
中野サンプラザ 2018.12.7(金) セットリスト(たぶん)
1.月のように星のように
2.Lady Ocean
3.IF YOU・・・
4.Lunafairymiena
5.TAKE IT AWAY
6.RAIN MAN
7.YOU’RE MY ONLY SHININ’ STAR
8.DESIRE
9.カバー曲
10.Nica's Dream
11.OSHI-TAO-SHITAI
12.初恋
13.AIRPORT LADY
14.SHIBUYA
15.Girl IN THE BOX
Encore
16.A Night in New York
17. TAKE YOU TO THE SKY HIGH
MoreEncore
18.See You Again
19.Together