1987年、某女子大にて

某女子大における某国際問題研究会の部室の壁一面は角松敏生のポスターで埋め尽くされていた。“I Wanna Be With You!”とか、“Do You Make Love With Me?”の文字が躍る赤いギターをかき鳴らす角松のポスターとかとか。全ての壁という壁を角松ジャック。部室内にはお経の如くエンドレスで流れ続ける角松ソング。ここは角松敏生研究会か?と見紛うような、極楽浄土のような素晴らしい部屋でしたね。あれは部長特権で部室を「角松敏生洗脳ルーム」にしていたのだ。余暇は勿論、部員を強制的に角松ライブ参戦させる。某東京都知事に負けない程の公私混同&横暴だったかも。よくクーデターが起きなかったな。

ある日、その部室にて。

今にして思えば部員全員、正に“Girl in the box”、中でも間違いなく最強の鋼鉄箱入り娘から、困惑気味に衝撃的な言葉を投げつけられたことは今でも忘れられない。

 

「部長が角松敏生が好きだってって言ったら、弟から『お姉ちゃんの友達って、そんなやらしい曲聴いてるんだ』って言われちゃったんだけど・・・」

 

そんなやらしい曲・・・やらしい曲・・・やらしい曲・・・


脳内リフレインするも、全然意味が分からない。角松敏生って、ノーエンドサマーとかランプインとか爽やかで夏っぽい健康的な曲を創ってると思い込んでいた私。自身もガールインザボックスであったが故に、角松ソングのいやらしさを聴き取れていなかった。いや勿論、Move Your Hips All Night Longがきっとデンジャラスだという事くらいは何となく気付いていましたよ。でもTokyo Towerの意味までは分からなかったなぁ・・・。その後ほどなく、夜明けまでヤリたいツアー等々で洗礼を受け、徐々に、角松の歌ってHなんだと認識し、いつしかそれが常識になり、そして麻痺していった。

 

2006年、岡村靖幸とのファースト邂逅

それは裁判員裁判施行前夜、法曹バブル期で裁判傍聴が今ほどメジャーではなかった頃の裁判傍聴記「霞っ子クラブ」でのこと。

私は岡村靖幸(以下「岡村ちゃん」とする)の事を知らなかった。初めて知ったのがこの裁判傍聴記における「被告人」としての岡村ちゃんだ。その時の感想は過去記事に書いた。

ツッコミ処は満載なれど、意外にこの裁判エピソードはベイベ(注:岡村靖幸は、ファンの事を「ベイベ」と呼ぶ。ミッチーがファンを「ベイベ-」と呼ぶのはこの派生だったのか?)のブログなどで殆ど披露されていない。ベイベが見ているのはあくまでもミュージシャンとしての岡村ちゃんであって、刑事被告人としての岡村ちゃんを別次元から観察して仕上げた面白可笑しい傍聴記など、取り上げるまでもないのかもしれない。

しかし改めて何度読んでもこの傍聴記、お腹がよじれて仕方がない。要は法曹界・ファン・傍聴マニアの3者の極端な温度差というか立ち位置の次元の落差と激しい意識の「ズレ」が、法曹界もファン心理も傍聴マニアも全部理解出来てしまう最も中途半端な立ち位置の私にとって、ひたすら抱腹絶倒なのだ。最近の私のお気に入りの箇所は、岡村ちゃんの主任弁護人(女性初の検事!の経歴を持つおばあちゃん御年93歳)が「ソング!」を連発するところね。「証人は岡村さんの作詞!作曲!歌詞!ソング!どれが魅力的だとおもいますか?」「彼がソングしてる時は天使のような気がするんですけどどうですか?」

 

まさかその10年後の2016年。岡村ちゃんのその「ソング」をヘビロテするようになってるとはなぁ。1987年の初心な自分もビックリ仰天な展開が、この後待ち受けているのであった。(ていうかこの主任弁護人、岡村ちゃんがソングしてる時って見たことあるのか?歌詞の意味とかちゃんと分かってたのか?!今更ながらに疑念・・・)

 

 

2015年、「あのロン」な頃

その時の経緯も上記過去記事に綴った。2014年夏、靖幸ラブなお友達の影響で何気に聴く羽目になった「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」(以下「あのロン」とする)に、私がハマったという話である。これは、3度の逮捕を経ても尚、絶対的に岡村ちゃんを支持するファンの熱量にやられた要素が大きい。つまり、岡村ちゃんの曲に純粋にハマったというよりは、ライブでのファンの姿と「あのロン」ワールドがピタリと重なったから、なんだな。

「あのロン」がいかに素晴らしい青春ソングであるかについては、ファンブログ等々に詳しいのでそちらに譲る。2015年4~5月。私も「あのロン」を狂ったように聴いては“寂しくて悲しくて辛いことばかりならば 諦めてかまわない 大事なのはそんなんじゃない”とお約束の箇所を自らに言い聞かせていた。

 

だが、「あのロン」って、岡村ちゃんの曲の中では数少ない真っ当に流せる「爽やか青春ソング」であり、岡村ちゃんのソングの殆どが厨二病変態エロソングであるという事実を、私はまだ知らなかった。

 

 

2016年、「愛おしゃ」から岡村ラビリンスへ

2016年3月末。想い出が付着していないバージンソングであり尚かつ私の精神を高揚させてくれる曲を探していた私は、Youtubeで「愛はおしゃれじゃない」(以下「愛おしゃ」とする)に出会う。

https://youtu.be/OhnD_9Am4eY

 

 

イントロ開始3秒で席捲する歓迎降臨のアトモスフィア。まだ岡村ちゃんは登場していないというのに。「シルエットだけで日本一、客を熱狂させるミュージシャン(出典:某ファンブログ。小出祐介談とのこと)」はマジだった。
この興奮の理由が理解できない人の為にざっとお復習いしておく。3度目の逮捕から時を経て表舞台に復帰した岡村ちゃんが、6年ぶりになる新曲「ビバナミダ」をリリースした翌年、Base Ball Bearの小出祐介と共同制作した新曲が「愛おしゃ」だ。3回も国家権力から社会的制裁を受け、人としてダメ出しを喰らったにもかかわらず、こうしてスポットライト眩いステージに立つことができるなんて、そりゃぁ、ファンじゃなくたって驚くわ。待ち侘びたファンに至っては、堕天使降臨の昂揚感でさぞ震撼したことかと。
「愛おしゃ」は歌詞が小出祐介で、作曲その他を岡村ちゃんが担当するコラボ曲。この歌詞がね、何て言ったらいいのかね・・・一応引用しとくと、掴みが“モテたいぜ君にだけにいつもそればかり考えて”で、“カーテン開くようにスカート脱がしたい”とか“くちびるをつけてみたい君のそのくちびる今夜”とかの連呼で、うわ、やらしいな~と思いきや・・・

・・・このフレーズで一気にオチるのだ。

 

“でも本当は電話もできない 一人による、夜、夜”

 

は、は、は・・・これ全部妄想ソングだったのか・・・って要するに変態ソングってことじゃんか!←実はこの「変態」がキーワード

 

すっかり「愛おしゃ」に足を絡め取られた私は、勢い余って、間髪入れず復活後のセルフカバーアルバム「エチケット(パープル)」をDLする。

 

 

この頃、Youtubeで岡村ちゃんが創る曲の大半が、実はとんでもなくいやらしく変態だったということに遅まきながら気付くことになった私。淫靡、変態、エロい、、、どんな言葉を並べ立てても彼の楽曲ワールドを一言では言い当てられない。「ビバナミダ」とか「あのロン」は、珍しくエロを一切廃した爽やかソングだったのだ。曲を比較することに何の意味もないのだが、30年余に渉って角松敏生が「やらしい曲ばかり創ってきた(by3月のTHE MCにて、ファンのお父様のお言葉)」と信じてきた私にとっては、ちょっとしたカルチャーショックであった。だって、角松がいくらエロいと言えども「暗喩」だし、スタイリッシュという名のオブラートに幾重にも包んでいるのに対し、岡村ちゃんは剥き出しのエロ全開で淫靡そのものなんだもの。しかも角松のそれはむしろリア充であるのに対し、岡村ちゃんのって全部「妄想」なんでしょ。これって要はつまり、ただの変態ってことだよね。「やらしい」を遙かに凌ぐわ。
いや~、学生時代、角松ファンで助かったな。あの時代「岡村靖幸のファン」だったら誰にも公言できずにひた隠したと思うよ(まるで中学生がエロ本を隠す感覚だ)。もしも部室を「岡村靖幸洗脳部屋」にしていたらと思うと背筋が凍る。大学当局からマークされ、「大学の品位を貶め」たとして停学処分を喰らい、部員のお嬢様方の親御さんから、強制わいせつ罪で訴えるとか激怒されてたかもしれない笑。

 

でもって話を「エチケット(パープル)」に戻すと、オリジナルよりは大分マシになっているものの、「毎日岡村靖幸を部屋で聞いていた男の子が、お父さんからゲイだと思われカミングアウトを促された(by某ファンブログ)」という程の、どう聴いても何かの喘ぎ声にしか聞こえない歌声も健在。「アルファ・イン」なんか、聴いた瞬間「歌うわいせつ物頒布罪」という称号が脳裏に浮かんだほどですよ。そう、岡村ちゃんの曲はとにかくひたすら猥雑、の一言なのだ。
しかし数回聴いてる間に感覚は麻痺し、プレイすること十数回後にはすっかり自分もベイベ気取りですよ、いやマジで。余りに気に入って、ライブDVDまでゲットしてしまったのがその証拠。ミッチー及川光博、ミスチル桜井和寿等々並み居るミュージシャンから絶大なリスペクトを受けている音楽性ってこういうことか!なぁんて。
中でもDATE~祈りの季節~マシュマロハネムーン~セックスに至るナンバーを、4曲ノンストップで繋いでフィニッシュする流れには驚いた。音楽をiTunesで一括管理し、専らiPodやiPadで再生するようになってからの大きな不満が、曲と曲の間に0コンマ数秒挟まる「ギャップ」。これ、曲と曲の間に僅かでも切れ目を感じさせると、テンションまで一緒に切れて台無しなんだよね。角松ダンスミュージックをノンストップで再生したくとも不可能で、Kadomatsu de omaみたくリアルに誰かノンストップリミックスしてくれ~っと叫びたくなる。
ところがこの4曲、マジで曲の切れ目が分からないのだ。曲調とかが同じ「マシュマロハネムーン」と「セックス」の間は何回聴いても判別できなかったな。最終的には歌詞をググって境界線を探したという。驚嘆。

 

この春にはなんと11年ぶりになるオリジナルアルバム「幸福」をリリースした岡村ちゃん。現在絶賛ツアー中とのことで、今週末の中野サンプラザのチケットを入手しようと思ったもののあったり前のことながらSOLDOUT。私もDATE(注:岡村ちゃんのライブのこと)参戦してみたかった。←ファン層はエイジレスっぽいからこれはセーフだと思うの。

 

岡村靖幸と小出祐介のライブ版「愛おしゃ」を聴きながら、「愛」について深~い考察に耽っていたので、その話を書き残すつもりが導入だけで終わってしまいそう。続く。