めちゃめちゃ遅くなってしまいました。
君がくれたもの からの続き、第6回目です。
今回は慶喜さん目線のお話です。
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お前が去ってから、季節が何度廻っただろう。
何度も春を過ごした気もするし、一度しか桜を見ていないような気もする。
ただただ、日々が過ぎて行った。
ぼんやり過ごしていたわけではないはずなのに、いや、体も心も、それなりに忙しくしていたような気がするのに……
実感が、ない……?
きっとそうなのだろう。
寛永寺であいつを『未来』に帰したあとも、時代はめまぐるしく変化した。
俺だけじゃない。
むしろ、俺に起こった出来事などは、些末なことでしかないと言えるだろう。
ただ、人に言われた通りに動いていたに過ぎない。
謹慎の場所を水戸へ移し、徳川宗家の家督を譲り、そして駿府に移った。
それだけだ。
しかし……
俺のために……いや、徳川幕府のために最後まで戦ってくれたものたちが、大勢死んだ。
あいつが島原にいた時に馴染みだった、新選組。
近藤は斬首となり、その首は京に晒された。
沖田は、病が平癒することなく、逝った。
特にあいつを贔屓にしていた、土方。
彼も、蝦夷の地に、散った。
俺の元には、こんな報告ばかりが届いた。
俺が、死なせた……
大阪から江戸へ帰る時。
あの時、最後まで戦う、と、秋斉に言った。
そんな俺を、秋斉は身を挺して、止めた。
その遺志を汲んで俺は、江戸へ帰った――。
……本当にそうだったんだろうか?
錦旗を見て、怖気づいたんじゃないのか?
秋斉の『遺志』として、逃げたんじゃないのか?
もし……なんて考えても、意味がないことはわかってる。
でも、もしあの時俺が大阪に残っていたら。
きっと、未来は変わっていたはずだ。
それが、今よりもいいものであるかは、わからないけれど……
俺はきっと、幕臣たちの死を聞いても、涙する資格すらないだろう。
何もしないこと。
それが俺にできる、唯一のことだった。
元号は明治になり、江戸は東京になった。
あの時大事だったもの……
徳川が、家臣が大事だった。
秋斉が、大事だった。
そして……お前が、大事だった。
愛しくて、幸せにしたくて。
俺は、大事なものを守れたのだろうか?
家臣は、大勢死んだ。
秋斉も……
……お前を、未来に帰したのは……正しかったのか?
未来に帰すことで、守れたのだろうか?
「慶喜さま、お食事をお持ちいたしました」
「あぁ、ありがとう」
食うのにも困らず、ただ生きている日々。
旧幕臣や、女中などは、妻を娶れと盛んに言う。
けれど俺は、いつもそれをはぐらかす。
一部では
『慶喜公は男色ではないか』
などと、囁かれているらしい。
まぁ、それならそれでいいさ。
だって、俺が愛しているのは……
俺が一緒になりたいと思っていたのは、あいつだけだから……
一度はお前の手にあった望遠鏡で、星を見る。
あの時に手を離さなければ、今でも、そばにいてくれたのだろうか。
この望遠鏡で一緒に星を見て
「綺麗」
と、微笑んでくれたのだろうか?
二度と会えない。
そうわかっていても……
俺は、お前の面影を探しながら、日々を過ごしているんだ。
続く……