母の帰国当日
「不束者の娘です」と言われたあの瞬間
出産後、母がアメリカに手伝いに来てくれました。
けれど私の中では「手伝ってもらう」というよりも
父の暴力のないところで
母に少しでも安心して、ゆっくり過ごしてほしい
という気持ちのほうが強かったように思います。
母が1ヶ月滞在して帰国するまでのあいだ
私はずっと父の機嫌に気を配っていました。
必要以上に怒らせないように
メールや電話のやりとりにも神経を使いながら
対応していたのです。
なぜなら、もし父が怒れば、
昼夜を問わず電話を鳴らし続けたり、
母が日本に戻った途端に暴力をふるうかもしれない
——そんな最悪の事態を想定していたからです。
本来なら、私は産後の身体をいたわり
赤ちゃんとの時間を落ち着いて過ごしたかった。
それでも、母にはご飯を作ってもらったり、
近くのビーチやスーパーに連れて行くことで
異文化を感じながら少しでも穏やかな時間を
持ってもらいたいと、精一杯努めました。
そして迎えた母の帰国当日の朝。
母は夫の前で正座をして
両手をつきながらこう言いました。
「不束者の娘ですが、よろしくお願いします。」
その瞬間、私は心が凍りつくような強い違和感とざわつきを感じました。
——私は「立派な人間です」
と言いたいわけではありません。
確かに、私にも未熟なところはあるかもしれません。
けれど、つい最近まで家族を扶養しながら、一生懸命に働いてきたことは紛れもない事実です。
結婚式の際には両親の離婚騒動があり
母はそれを止めることもできなかった
出産を迎える頃にも、父の訪米のことで混乱し、
母の訪問すら危うくなった——
そんな騒ぎのすべてを、
私は“娘として”どうにか収めながら
赤ちゃんを迎える準備をしてきたのです。
なのにどうして、ここで「不束者の娘」と言われなければならないのか。
どれだけ家族を支えてきたのか——
その「実績」や「尊厳」に一切目を向けず、そんな言葉を投げかけられたとき、
私は自分の存在価値そのものを否定されたようで、心が震えました。
形式的な、日本独特の「へりくだり」の
挨拶かもしれません。
でも私にとっては、何ひとつ守られず、
誰にも正当に評価されてこなかった自分が
さらに矮小化されるような、深く傷つく言葉でした。
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