丹田呼吸の科学と実践(Science and Practice of Tanden(Dantian) Breathing) -10ページ目

丹田呼吸の科学と実践(Science and Practice of Tanden(Dantian) Breathing)

産婦人科医の久保田武美と申します。
大病をきっかけに呼吸法の研究を始めました。
その中で、逆腹式呼吸という素晴らしい呼吸法に出会いました。
数々の実験を通して呼吸法を科学的に分析し、
その効果・活用方法を説明してゆきたいと思っております。

今回は逆腹式呼吸と胸腔内圧の関係についてお話ししたいと思います。
 
皆さんは
胸腔内圧」という言葉をご存じでしょうか?

胸骨、肋骨、胸椎で構成される鳥かご状の胸郭の中に存在し、
図で示した胸膜腔の中の圧力が胸腔内圧です。
心臓を取り巻く圧力でもあります。
 
例えば、
出産や排便また重量挙げなどのスポーツで
大きな力を発揮しようと息を止めて「いきむ」と、
血圧が短時間に上下に変動します。
この「いきむ」ことを怒責と言います。
その結果、
血圧が高すぎる時に脳出血を起こしたり、
低すぎる時に失神したりします。
 
 
少し難しいので漫画にしてみました。
これは、循環器内科医の坂田隆夫先生に伺ったお話です。

☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆
 
まず、
力を出すためにいきむと
胸まわりの筋肉が収縮して
胸郭が圧迫され
胸腔内圧が上がり
心臓が締め付けられます。
 
 
すると
身体から心臓に戻るはずの静脈血が
心臓に戻れなくなり、
その結果
心臓から拍出する動脈血も減少して
一時的に血圧が下がります。
 
 
それを頸動脈洞および大動脈弓などに存在する
圧受容体が察知して
交感神経が刺激され
血圧が上昇します!
 
 
 
血圧急上昇です!
 
 
これをまた
圧受容体が察知すると
今度は副交感神経が
血圧を下げようと頑張ります!
 
 

 
血圧急降下です!

 
 
 
コンマ何秒の間に
血圧が
急降下⇒急上昇⇒急降下
を繰り返し
この急降下のときに
失神してしまうこともあります。

 
急降下⇒急上昇
のところで脳出血などで命を失うことも・・・
 
☆…━━━━━・:*☆…━━━━━・:*☆
 
 
では、
どうして胸腔内圧は急上昇するのでしょう?
 
それは、
力を発揮するために
腹圧(腹腔の圧力)が上がる時、
横隔膜を隔てて腹腔と隣り合わせの
胸腔内圧まで
一緒に上昇してしまうことが想像できます。
 
 
しかし、逆腹式呼吸なら、
上虚下実という言葉があるように
腹圧だけを上昇させて、
胸腔内圧を急上昇させずに済むのです。
 
次の表を見てください。
胸腔内圧は食道内圧で代用した(食道内圧変動は胸腔内圧変動を反映するとされている)。
青の囲み:腹圧も胸腔内圧も低い___
赤の囲み:腹圧は高いが胸腔内圧は低い
緑の囲み:腹圧も胸腔内圧も高い___
 
これまで、いろいろ説明してきましたが、
私が言いたいことは以下の数行です。
 
逆腹式呼吸は、
胸腔内圧を上げずに、
すなわち心臓に負担をかけずに
強い力を発揮できる呼吸法と言えることになります。