「歌はむかしから好きだった?」
 「ええ、中学一年のときに、よく『歌のない歌謡曲』を聞いていました。
 それで歌謡曲っていいなあと思って」
 「あれ、朝のずいぶん早い時間でしょ?」
 「そうです。ぼく朝は早いんですよ。登校も一番です」
 「成績も一番」
 「そう調子よくはいきません」
 「とにかく一番ってのはたいしたもの。毎朝一番?」
 「ええ、だれか先に行ってるといやなんです」
 「なぜ?」
 「ただなんとなくいやなんです」
  
  ニッと笑うと、八重歯がとてもチャーミング。
  女がキャーキャーさわぐはずだ。
  憎たらしいったらありゃしない。