デジャヴ(既視感)ということがあるけれど初めてMelee(メイレイ)を聴いたときには既聴感のようなものがあって、これはメロディやサウンドが誰かのコピー的だということでは全くなくバンドの個性もハッキリ持ちつつも過去の音楽エッセンスが凝縮された良い意味での感覚である。Meleeの2ndアルバム「Devils & Angels
」がドロップされ、ますますそうした思いは強くなっている。一部にはKeaneとかColdplayに似ているという声も聞こえるけれどピアノが効果的にフィーチャーされている以外には個人的にそうしたイギリスのバンドの匂いは感じず、アメリカはカリフォルニア出身という土地柄そのままの80年代アメリカン・ロックのヴォーカルと歌メロ満載という印象がとても強い。
例えば名曲との呼び声高いシングル“Built to last”の歌メロや声や節回し、“For a lifetime”でタイトルに冠されるLifetimeという単語、正統派ロックでありながらもマーケットの中で稀有な存在になるというタイミング。80年代の良質で美しいメロディ満載だったハードロックからグランジへとマーケットが舵を切って行こうとする90年代初頭に姿を現したFirehouse(ファイアーハウス)に重なる。
MeleeはFirehouseよりも効果的かつ印象的かつ意図的にピアノをフィーチャーしていることから一聴すると最近のピアノロック系アーティストのように聴こえるかもしれないけれど、真ん中にあるのは強力な歌メロと印象的なギターリフからなる相当に図太いロックなのであって、そういう意味ではMaeの最新アルバム「Singularity」が好きな人には刺さること必至のアルバムであるし、ボーナストラックとして収録されているHall & Oatesのカバー曲“You make my dreams”はカバーというよりそのまんまコピーに近い夢見心地の80年代サウンドなのであって、やはり良い意味でノスタルジックである。
これが単に懐古趣味的なサウンドに止まらないのは軟弱にならないぎりぎりの繊細さをうまくミックスしているからなのだろう。昔を知っている人には懐かしく、知らない人には新しく、つまりはすべての人に新鮮に届くサウンドと時代背景があるということだ。何だか意味がわからないけれど興味があると思う人はぜひFirehouseのアコースティック・アルバム「good acoustic
」も聴いてみて欲しい。基本的にピアノやキーボードはあまりないけれどきっとMeleeと同じようなメロディの世界を感じることが出来るハズ。そしてどちらのアルバムを聴いても天国と地獄を同時に体験することになる。超絶なまでの美メロで天に昇るかのような気持ちになると同時にそのメロディに心奪われることで締め切りに追われる仕事もテスト勉強も捗らず地獄を見ることになる・・・。
公家尊裕(Takahiro Kouke)
