皆さんこんばんはイタリア料理人のtetsuです。
今日のお話しは修業時代の思い出について
語りたいと思います。
これはまだ入社して間もない頃の話。
僕が修業した店は銀座ラベットラ
18歳から15年お世話になった第二の家
そのボスは皆さんもご存知の落合務氏
陽気な性格と笑顔がとても印象的だか
ひとたび厨房に入れば、誰もが恐れる
超怖い存在。(今はそんなことありません!)笑
入ったばかりの下っ端にとっては殆ど話すことも出来ない雲の上の存在だった。
入ったばかりで1番の下っ端だった僕は毎日洗い物と雑用に追われる日々。
シェフから名前も顔もまだ覚えてもらってないような奴だった。
そんなある日のこと、いつも通りディナーに向けて仕込みをしていると突然厨房にシェフが来て
「誰だこんなもん外に置きっぱなしにしたのは」
と少し怒った様子のシェフに緊張が走る
その手には缶切りが握られていた。
恐らく誰かが外で缶切りを使いそのまま置きっぱなしにしたのをシェフが拾ったのだ。
その時厨房に居たのは下っ端チーム四人。
先輩三人と僕。
僕は身に覚えがなかった。
先輩達は直立不動で無言のまま。
皆シェフに怒られるのが怖かったのだ。
誰も何も言わない状況にミルミル機嫌が悪くなるシェフ。
今にも怒り出しそうな顔にさらに恐怖で体が固まる下っ端達。
ついにシェフの怒りが爆発すると緊張が走ったその瞬間
その緊張を切り裂くかのように
「僕です!すみません!」と名乗り出た者がいた
なんとそれは僕だった。
とっさに出た言葉に僕自身も驚いた。
身に覚えがなかったがこのまま黙っていてはヤバイと野生の感が僕を動かした。
勢い良く飛び出した手前、後に引けなくなった僕はシェフの目の前に立つと覚悟を決めて歯を喰いしばった。
(なぜ歯を喰いしばるかはお察し下さい)笑
カミナリが落ちるかと思われたその時
シェフから意外な言葉が
「お前正直でいいな!気に入った!名前は?」
僕が名乗ると笑顔で缶切りを僕に手渡しそのまま厨房から去っていった。
今思えばシェフは犯人探しをしてたわけでもなく怒るつもりもなかったのかも。
普通に注意して終わりだった話を勝手に怖がって壁を作っていたのはこっちの方だったのだ。
僕は自ら作っていた壁を自らの手で壊した。
この時のことは今でもよく覚えている。
僕が初めてまともにシェフとした会話だったからだと思う。
その日を境にシェフは僕のことを覚えてくれた。
そしてとても可愛がってくれた。
もちろんこの先も沢山怒られたし、歯を喰いしばるようなことも沢山あった。笑
でもそのすべてが僕の財産だ。
自分が信頼されたければまずその人を信頼しなければならない。
自分を好きになって欲しければまずその人を好きにならなければならない。
当たり前のことだけどそれはとても重要なこと。