パレスチナ自治区ベツレヘムに、なぜキリスト教徒が殺到するのか。
イエス・キリストが生まれたとされる聖地だからだ。
その地に建つのが「生誕教会」だ。
ローマ大帝コンスタンティヌスの母ヘレナが、
教会地下にある洞窟をイエス生誕の地と定めた。
大帝は母の思いを受け止め、325年に教会を建てた。
キリスト教徒も異教徒も「謙虚のドア」から教会内へ。
メンジャー広場に面した小さなドアで、身をかがめて入るからだ。
バジリカには大勢の観光客、ラッシュアワーのような賑わい。
ガイド嬢「ここはいつもこうなの。たぶん1~2時間待ちね」。
冷房は効いていない。汗がじわっと噴き出す。
長い行列は遅々として進まない。
バジリカは運悪く修復中。
床には穴が開けてあり、中をのぞくと美しいモザイク。
コンスタンティヌス大帝時代のものとか。
「トイレが必要な人は今の内にどうぞ」。
ガイド嬢の案内に、メンバー6~7人が列を離れる。
戻って来たメンバーに、甲高い英語が浴びせかけられた。
「割り込むなよ」。60歳くらいの男性だ。
「みんな同じグループで、トイレに行っただけなんだ」。
ブロークンな僕の説明だが、なんとか怒りは収まったようだ。
こんな時、時間の流れは遅い。
それでも1時間半待ちで、地下洞窟入口へたどり着いた。
薄暗い洞窟、銀色に輝く星の印があった。
ここがイエス生誕の地とされる。
しかし滞在時間は20~30秒しかない。
跪いて祈りを捧げ、急いでカメラのシャッターを切る。
フラッシュは禁止なので、僕のような薄ぼんやり写真になった。
もたもたしていたせいか、係員に「行け!」と促された。
はるか極東から来たのだから、優しくしてよ。
なぜマリアはベツレヘムに来たのか。
受胎告知を受けた古里ナザレから南へ200㎞も離れている。
ルカによる福音書では「人口調査のため」と記している。
マタイやルカによる福音書によると、
新しいユダヤの王となるイエスを寿ぐため、
星に導かれて、東方の三博士(三賢者)がやってきた。
ボッティチェリ、ボス、ルーベンス、ベラスケス、レンブラントら、
巨匠によって何度も描かれた有名なシーンだ。
午後4時を過ぎた。僕たちはホテルへ戻る。