大腸麺線で腹ごしらえした僕。
基隆駅前から基隆客運の金山行きバスで、登麗君=テレサ・テンの墓参りに向かう。
台湾北端、東シナ海を望む金宝山の山裾にテレサは眠っている。
バスは東シナ海を右手に見ながら一路西へ。
約1時間で金山の中心、金包里街に到着した(60元=210円)。
ここから金宝山へはタクシーに乗るしかない。
幸い、バス停近くで数台が客待ちしている。
僕は人の良さそうなドライバーに近づき、メモ帳を見せる。
メーターは付いているが、運賃は交渉で決めるのだ。
このドライバーは劉義生さん。
黄色いタクシーの後部ドアに名前が書いてある。
だから、ぼったくるようなことはしないだろう。
劉さん、僕のメモ帳に「250 250 500」と書き込んだ。
片道250元、往復500元(1750円)ということだ。
ガイドブックに書いてあった運賃と変わらない。
OKしようかと思ったが、僕はひねくれものだ。
「450」と書いて劉さんに見せる。劉さん、少し考えて「OKよ」。
平日の昼間、暇だったから値下げに応じたのだろう。
金宝山墓苑まではタクシーで15分ほど
登麗君の墓は入り口左手の一等地にあった。
ピアノをイメージした大きなモニュメントが僕を迎えてくれる。
■
劉さん、身振り手振りで鍵盤の上に乗れとすすめる。
「いいのかなあ、そんな無礼なことしても」。僕は内心で独り言ちながら、鍵盤に乗った。
すると聞き覚えのあるテレサの歌声が流れてきた。
彼女の大ヒット曲「つぐない」だ。
歌詞の引用は著作権法に違反する恐れがあるので止めておこう。
右手に黄金のテレサ像。
お墓は墓地の一番奥、
写真や花束で埋め尽くされていた。
僕は跪(ひざまず)き、静かに両手を合わせる。
1995年、42歳の若さで亡くなったテレサ。
台湾で生まれ、日本、香港、タイ・チェンマイと流転する。
彼女の波乱に満ちた半生を思うと、僕は切なさを抑えきれなかった。
■台湾気まぐれクイズ
テレサの墓(テレサの視線)はどちらの方向を向いているでしょうか。
(1)日本(2)父母の出身地・中国河北省(2)生まれ故郷の台湾中心
(3)天安門事件支援で活躍した香港(4)タイ・チェンマイ(5)大空(6)その他。