日本ではノホホンとしている僕だが、海外に出ると動物的な勘は鋭くなる。

これまで選んだレストランも食堂も、ほとんど外れはなかった。

安くて美味しいし、スタッフもフレンドリーだった。


よく歩くせいか、午後3時ごろ、お腹の虫が騒ぎだす。

しかしガッツリ食べると晩飯が食べられなくなる。

そんな時、僕は屋台に直行した。




10バーツ(32円)もあれば、小腹は微笑んでくれる。

僕の一押しはホテルから徒歩5分、駐車場の一角に並ぶ屋台だ。

ビルの谷間にあるせいか、観光客はほとんどやってこない。


冬の太陽が傾き始めるころ、5軒ほどが三々五々オープンする。

僕のお気に入りは「ROTEE(ロティ)」の屋台だ。

ロティはイスラム圏のクレープ。



ヒジャブ(スカーフ)をしたイスラム系のおばちゃんが営んでいる。

ナイトバザール近くにモスクもあったし、イスラム系の銀行もあった。

チェンマイにはイスラム教徒が多いのだろうか。


トッピングもクレープのように多彩だ。

シロップやクリームだけのシンプルなものから、

ハムやソーセージ、ローストした羊肉のような豪華版も。



ハム・ソーセージは羊肉がほとんど。

イスラム教徒は豚肉を食べてはいけない(アルコールも飲めない)。

僕はシロップが大好き(1枚10バーツ=32円)。


このシロップはしつこいくらい甘い。

アルコールがご法度のイスラム教徒は、やたら甘いものを食べまくる。

それでもチェンマイの風に吹かれながら食べると、心地よく感じるから不思議だ。



ロティの隣は豚串の屋台だ。

もちろん屋台のおばちゃんは仏教徒のチェンマイ人だ。

豚肉を食べちゃいけないイスラム教徒の側で豚肉を焼く、これぞ平和の象徴だろう。


豚串は1本8バーツ(25.6円)。

豚肉と野菜が交互に八つも串に刺さっている。

ナンプラーベースのタレが沁みて、ミラクルな美味さだ。



たまらず僕はビールの屋台に走る。

豚串とビール、素朴だけど最強のコンビネーションだろう。

僕は日本人に生まれた幸せを、しっかり噛みしめた。