ビルマの街タチレイの観光を終え、タイのメーサイに戻った僕と豪州人のロイ。
ガイドのエムちゃんと合流、黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル=GT)をめざす。
ワンボックスの車中で話を聞くと、他の欧米人5人もビルマに入国していた。
黄金の三角地帯はタイ、ミャンマー、ラオス3国がメコン川で接する山岳地帯。
かつては麻薬王クンサーが支配し、世界最大のケシ(アヘン原料))栽培エリアだった。
観光客は立ち入り禁止。取材に入ったジャーナリストも多数殺害されている。
タイ軍による掃討作戦や経済成長によって治安が回復。
1990年代以降は観光客も自由に立ち入れるようになった。
それから約20年、まだ見ぬGTに僕の期待は否が応でも高まる。
メーサイから東へ40㎞、約1時間で到着した。
勇躍ワンボックスを降りた僕、期待はすぐに失望に変わった。
大型観光バスが駐車場を埋め、スピーカーからタイ・ポップスが大音響で流れている。
メコン川沿いには金ぴかの仏像が鎮座し、お土産屋さんも軒を連ねている。
ビューポイントにはアジア系の観光客がひしめき、甲高い中国語・韓国語が飛び交う。
まるでミーハー観光地だ。ケシ栽培エリアの片鱗は微塵も感じられない。
観光地としての魅力はゼロと言ってもいい。
まあ、これも旅だろう。
グループツアーはGT南20㎞のチェンセーン(Chiang Saen)に立ち寄る。
1328年に開かれた古都で、14世紀に建立された寺院が素晴らしいとか。
僕には観光する気力は残っていなかったが、グループツアーだから付き合わざるを得ない
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チェンセーン王国の菩提寺だったワット・チェディ・ルアン(ワット=寺)。
かつては栄華を極めた寺院だが、チェンセーン王国滅亡とともに廃墟になり、
いまは八角形の台座の上に高さ10mの塔が残っているのみだ。
すべての観光が終わり、チェンマイへ戻るのみだ。
トイレ休憩を1回挟み、ワンボックスカーは時速100㎞超でひた走る。
冬の太陽は西の空に沈み、夜の帳が訪れた午後7時過ぎ、チェンマイの戻った。
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僕はマイホテルではなく、ターぺー門近くで車を降りる。
毎週日曜日の夜は「サタデーナイトマーケット」は開催されている。
だからマイホテルそばで毎夜んぎわう「ナイトバザール」が閑散とするのだ。
大勢の観光客が繰り出し、人々の嬌声が飛び交うナイトマーケット。
僕は気力を取り戻す。やはりアジアの混乱と混沌が僕には似合っているのだろう。
安くて美味しい屋台も並んでいる。さあ何を食べよう。チェンマイの夜は始まったばかりだ。