日本ではちゃらんぽらんな僕だが、旅に出ると頑なに守っているルールがある。
その地に暮らす人たちと同じものを食べ、同じ空気を吸い、
生活習慣や伝統文化に親しむことだ。
ここはラオス。ラオスを代表する料理「ラープ」から始めよう。
ラープはミンチ状の肉や魚をレモングラスなど香草と絡めて炒めたもの。
肉は牛・豚・鶏と多彩。海のないラオスでは魚は川魚がメーンだ。
ビエンチャン街歩き初日、情報が乏しいので、「地球の歩き方」掲載店へ。
それが本格ラオス料理レストラン「クア・ラーオ(Kua Lao)」。
ホテルから徒歩10分、そこで僕は途方に暮れた。
広い前庭、コロニアル風の瀟洒な洋館。
フランス統治時代の建物を丸ごと使った豪華レストランだった。
よれよれのジーンズにTシャツ。僕には似つかわしくないオーラが満ち満ちている。
行きつ戻りつ、勇気を振り絞って玄関へ。
するとドアが向こうから開いた。もちろん自動ドアではない。
民族衣装の女性が優しく迎えてくれたのだ。
白いクロスがかかったテーブル席に、恭しく案内された。
おずおずとメニューを開く。ラオス語と英語が併記されている。これなら僕にもわかる。
看板メニューが「ラオス料理セット」。
ラオス料理8品がセットで1万2000kip(1200円)。
しかし初志貫徹。男は一度決めたら命がけ。ラープしかな~い。
ラープもよりどりみどり。
ラープ・カイ(鶏)、ラープ・グア(牛)、ラープ・パー(豚)、ラープ・ムー(魚)。
女性スタッフ一押しのラープ・カイとお手合わせ。
ラオスの主食はもち米(カオ・ニャオ)。
竹で編んだ「ティップ・カオ」という小さなお櫃(ひつ)でサーブされる。
「歩き方」によると、大衆店では白米、高級店では赤米のことが多いとか。
「カオ・ラーオ」はどっちだろう。
いざオープン。おっ、赤米だ。やはり、ここは高級店だった。
いつものようにビール。
僕は旅に出ると、心の箍(たが)が緩んでしまう。
昼もビール、夜もビール。有料の水を飲むくらいなら、安くて美味しいビールだろう。
ビア・ラーオ「ダーク」の小瓶は1万kip(約100円)。
「おかき」のようなものが無料でついてくる。
「これは何?」。女性スタッフにたずねたが、彼女は困惑の表情を浮かべた
僕のジャパングリッシュが通じないようだ。
なんと山盛り野菜がセット。
それでなくても小食の僕、とても食べきれない。
はしをつけずに「ごめんなさい」。そのまま下げてもらった。
濃い味付けが特徴のラオス料理だが、ラープはクセがなく食べやすい。
たぶん地鶏。肉の旨みがしっかり。適度な歯ごたえも快感だ。
カオ・ニャオは指でつまんで食べるのが正しいマナーとか。
▼政府の要人が食事にやってきた。スーツ姿はSP
観光客につき、はしを使わせてもらおう。
ラープ・カイ4万8000kip、カオ・ニャオは1万kip。
10%のTAX&サービス料が付いても7万4800kip(748円)。
高級店でも、このお値段。
胃袋も心も充たされた僕。女性スタッフに見送られて、お店を後にした。
ラオス料理にはまりそうな予感を感じながら。