どうして楽しい時間は早く過ぎ去るのだろう。
バルト三国の旅も1日半を残すのみ、
明日午後には帰国の途に就く。

▼エストニア行政・立法の拠点トームペア城
T上司ランチ漫遊

きょうは丸1日、世界遺産タリン歴史地区を歩き倒さなくっちゃ。
気温は6度。日本は春だが、こちらはまだ冬だ。
北ヨーロッパの春は遅い。

まずトームペア城へ。
13世紀に建てられた騎士団の城だ。
政府の重要機関が入っており、内部見学ができないのが残念。

トームペア城の南端にあるのが「のっぽのヘルマン」。
もちろん正式名称ではない。高さは50.2m。
細くて高いから「のっぽ」。

▼エストニア旗が掲げられた「のっぽのヘルマン」
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ヘルマンは男性の名前とか。
日本で言うと「太郎」のようなイメージかな。
かつてはお城の見張り台だったが、いまは国民統合の象徴だ。

旧ソ連から独立した1991年8月20日、
この塔に初めてエストニアの3色旗が掲げられた。
それ以来、日の出とともに国歌が奏でられ、国旗掲揚が行われている。

雨の日も雪の日も風の日も。それは1日たりとも絶えたことはない。
人々は独立の喜びをかみしめながら、親しみを込め、
「のっぽのヘルマン」と呼び始めたとか。

▼海洋博物館として使われている「ふとっちょマルガレータ」
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のっぽがいれば、ふっとっちょもいる。
それが愛称「ふとっちょマルガレータ」だ。
1529年にタリンを守るために建てられた砲塔。

直径24m、壁の厚さは4.7m。
ずんぐりもっくり、まさに「ふとっちょ」だ。
砲塔の役目を終えた後は監獄として使われていた。

囚人の食事を切り盛りしていたおばさんが「マルガレータ」。
このおばさん、かなりずんぐり体型だったとか。
だから「ふとっちょマルガレータ」。

▼トームペア城を睥睨するようにたたずむロシア正教会
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できすぎた話のような気もするが、タリン市民は信じているとか。
ヘルマンとマリガレータのように私も愛されたいなあ。
もちろん可愛い女性に(ウソですよ)。

タリン市民が強い違和感を感じているものもある。
それがロシア正教の教会、アレキサンドル・ネフスキー教会だ。
たまねぎ型のドーム、一目でロシア正教会と分かる。

1901年、帝政ロシアが建設。
よりによってトームペア城の真向かい。支配者の意図はみえみえ。
帝政ロシアとソ連の圧政に苦しんだ市民。心安からざる思いがあるだろう。

▼ソ連の空爆で破壊されたのち、再建された聖ニコラス教会
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▼1404年に完成した旧市庁舎。塔の高さは65メートル
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▼1410年に建設された大ギルド会館。今は歴史博物館
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聖ニコラス教会、旧市庁舎、大ギルド会館などをめぐり、
タリン一の格式を誇る五つ星ホテル「三人姉妹(The Three Sisters)」へ。
ふむふむ、かつて美女三姉妹が住んでいたのかな、

いやいや、ファサードが女性的な雰囲気を醸し出しているから「三人姉妹」。
2007年、最高級のピアノスイートに天皇・皇后両陛下が宿泊されたのをはじめ、
エリザベス女王やV6岡田准一くんが宿泊したそうです。

ちなみにピアノスイートは1泊15万円。平凡なツインでも1泊4万円。
もちろん、私たちが宿泊できる値段ではありません。
じゃあ何のためにやって来たのかって?

▼女性的なファサードが印象的なホテル「スリー・シスターズ」
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はい、ランチを食べるためです。
天皇陛下が食されたディナーが「エンペラーズランチ」として人気なのです。
黒服のボーイに案内され、しずしずとレストランへ。

瀟洒な内装。
真っ白いテーブルクロスとナプキン、ピッカピカのカトラリー。
ジーンズやパンツの4人組。顔を見合わせ「場違いだったかな」。

ナプキンやワイングラスには「3S」のイニシャル入り。
ボーイが引いてくれたイスに座り、ランチスタート。
前菜は二つ。

▼天皇ディナーのテーブルセッティング
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▼前菜二つ。美しい盛り付け、優しい味付けだった
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まず魚介のパイ包み。
白と茶色(どちらもいい香り)のパイ包み。
サフランソースで仕上げた魚介が香ばしい。

二つ目の前菜は、サンダニエール産プロシュートの野菜包み
トマトのソルべを添え、、ラズベリーソースでデコレーション。
プロシュートは塩分のバランスが絶妙です。

メーンは仔牛腰肉のグリル、ショロンフォームのせ。
ホワイトアスパラガス、トマトのコンカッセ、
トリュフ入りマッシュポテト添え。

▼メーンとデザートとプチフール。ほどよいボリューム感だ

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素材の持ち味がしっかり生きた料理たち。
多彩なソースがメーンの食材を穏かに盛り立てる。
「美味しい」「美味しい」。

ボキャ貧とののしられようと、それしか言葉が出ません。
デザートは温かいスポンジケーキ、バニラアイス、ピスタチオ添え。
豪華なプチフールの盛り合わせでフィニッシュ。

出費はかさんだが(45ユーロ)、いい体験ができました。
もう思い残すことはありません。そんなあ、まだまだ観光が残ってるよ。
女性陣3人がトイレに行ってるすきに、コンシェルジュ嬢とおしゃべり。

▼笑顔がすてきなコンシェルジュ。フランクな人だった
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彼女の名は、たぶんキュイク(そう聞こえた)。24歳とか。
「タリンはいい街ですね」。とりあえず外交辞令。
「日本人は素敵です。私も異国を旅したいゎ」

「どの国へ行きたいの。ニッポンはどう?」
「東京がクールね」。東京かあ。広島ならホームステイさせてあげるのになあ。
「ヒロシマ原爆知ってる?」

「知らないわ。でもフクシマはニュースで見たゎ」。
う~ん、ヒロシマの世界化は意外に進んでいないようだ。
おしゃべりが佳境に入ろうとした時、女性陣がトイレから戻ってきた。

▼タリンのお寿司屋さん。寿司セットが35ユーロもした
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ウサギさんの視線が気になる。そろそろ切り上げなくっちゃ。
メールアドレスを聞き出せなかったのが悔しいなあ。
午後2時、気温はようやく8度に上がった。

ストマックもハートも満たされし、絶好の観光日和だ。
スーパーにも立ち寄り、お土産も買わなくっちゃ。
タリン出発まで、もう24時間を切った。

<エストニア共和国>
1991年、旧ソ連から独立。3004年、EU加盟。通貨はユーロ。総面積4万5227平方キロ(北海道の約6割の広さ)。首都タリン。人口は138万人。エストニア人70%、ロシア人25%など。公用語はエストニア語だが、ロシア語やドイツ語、英語も通じる。宗教はキリスト教(プロテスタント)のほかロシア正教も。

★有害無益のバルト三国クイズ<11>

タリン旧市街に、こんな看板のショップがありました。これは何屋さんでしょう?

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(1)アンティーク店
(2)ペットショップ
(3)お土産店
(4)雑貨店
(5)書店
(6)携帯ショップ
(7)その他

■第10回解答
 郵便局でした。ホルンがシンボルマークです。