夕闇に追われるように、オーバーアマガウからフュッセンへ。
フュッセンはノイシュバンシュタイン(Neuschwanstein)城観光の拠点となる町だ。
午後8時過ぎ、三ツ星ホテルにチェックイン。

その時、フロントのお嬢さんから耳寄り情報。
「ライトアップツアーに参加しませんか。このホテル発着で5ユーロですよ」
もちろん、迷わず「イエス」。いい写真も撮れそうだ。

▼ほんのりライトアップされたノイシュバンシュタイン城
T上司ランチ漫遊
▼こちらはフュッセン市庁舎。橋の上はアイスバーン
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バスは20人乗りくらい。
オール欧米人、アジア人は私一人だけ。
少し遅れて、日本人らしい若い女性が乗り込んできた。

彼女は車内を見回し、「隣、開いてますか」。
もちろん「はい、どうぞ」。たぶん顔はにやけていただろう。
車内が薄暗いので、彼女には分からなかったのが幸いだった。

▼雪が舞うマリエン城をバックに、記念写真を撮り合う

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彼女は大阪の大学生。
今年1月にポルトガルに入り、スペイン、フランスを経てドイツに来たという。
手持ち資金が尽きるまで、日本には帰らないとか。

ノイシュバンシュタイン城、マリエン城、市庁舎をのぞむスポットで写真ストップ。
マリエン城をバックに写真を撮り合い、約1時間でナイトツアーはフィニッシュ。
もちろん彼女とは何事もなく、それぞれホテルの部屋に消えた。

▼朝食バイキング。この会場で、偶然にも彼女と再会
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一夜明け、朝食バイキングを食べていると、日本語が聞こえた。
「おはようございます」。振り返ると彼女が立っていた。
「ここへ、どうぞ」。図々しく相席をすすめる。

なぜか気が合い会話が弾んだ。
彼女は東へ、こちらは北へ向って旅立ち。
アドレス交換もせず、笑顔で別れを惜しんだ。

▼ノイシュバンシュタイン城に続く山道わきのプチホテル
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いよいよノイシュバンシュタイン城の観光だ。
観光は自由見学ではなく、ガイドツアーに参加することが必須となっている。
しかも入場チケットの購入が、個人観光客にはかなり厄介なのだ。

入場チケット(9ユーロ)はお城ではなく、
ふもとの街にあるチケット売場で指定時間の80分前に買わないといけない。
そして入場20分前までに、入場ゲートに到着する必要がある。

▼急坂を登る2頭立ての馬車。お馬さんは大変だなあ
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お城に続く山道は、かなり急勾配だ。
一生懸命歩いても、40数分はかかる距離だ。
お土産屋さんをのぞいたり、カフェで一休みする時間はない。

しかも今は雪道だ。
転んで怪我をしてもいけないの、乗り合い馬車に乗ることにした。
上りは6ユーロ、下りは3ユーロと合理的なシステムだ。

▼馬車の最前列に陣取る。お馬さんの怪しげな行動が丸見え
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観光客の多いな夏場はバスもあるが、
この時季は運休している(上り1.8ユーロ、下り1ユーロ、往復2.6ユーロ)。
運よく最前席に座ることが出来た。

2頭立ての馬車。12人の客(&御者)を乗せ、坂道を登り始めた。
白い息を吐きながら、渾身の力で馬車をひく馬たち。
全身から汗が噴き出し、白い蒸気に変わる。

▼チケットを読み取り機に入れると、バーが回って入城できる
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ほぼ半分近く登ったところで、なぜか急停車した。
馬が疲れた?いや馬のお尻から、茶色いものがボコボコ。
なんとトイレタイムだった。もう臭いのなんの。

総勢20人ほどの多国籍ツアー。
日本語のガイドホンを耳に当て、場内観光がスタートした。
バイエルン国王ルードヴィヒ2世(1845~1886年)の夢の跡の探索だ。

▼ノイシュバンシュタイン城の中庭。残念ながら城内は撮影禁止
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作曲家リヒャルト・ワーグナーのパトロンだった王、
「ローエングルン」「パルシファル」などオペラの名場面が場内の壁を埋める。
まさに豪華絢爛。目もくらむ眩さとは、このことなのだろう。

場内観光は35分ほどで、あっけなく終了する。
妃も娶らず、時代錯誤のお城造りに取り疲れた王、
その孤独で数奇な運命を、このお城は垣間見せてくれるようだ。

▼ノイシュバンシュタイン城全景。新緑の頃もいいが雪景色も最高
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バイエルン国の財政を破綻させ、謎の死を遂げた王(暗殺説が有力)。
21世紀に入り、彼の城は全世界から観光客を集め、多額の収益を生んでいる。
あの世で王は「ほら、先見性があっただろ」とほくそ笑んでるかも。

まあ、これも歴史の皮肉。
白一色の「白鳥城」は、複眼的な視点の大事さを訴えかけているようだ。
さて、馬の糞(ふん)を踏まないように、山道を降りなくっちゃ。

■全く役立たないトリビアクイズ<7>

T上司ランチ漫遊 南ドイツのホテルで普通に目にするゴミ箱です。
よ~く見ると、日本のホテルのものと
大きな違いがあるんです。
それは何でしょう?

★第6回解答 

洗濯物(下着、靴下)がすぐに乾くこと、でした。
もちろん火災の心配はありません。