ここはオランダ首都アムステルダム。
ツインベッドで安眠、目覚めは心地よい。
しっかり朝ごはんも食べた。快眠・快食・快便、体調は万全だ。

午前9時を過ぎたのに、太陽は全く顔を見せない。
暗くて長い北ヨーロッパの冬。鈍色の空が広がるのみだ。
憂鬱な気候と裏腹に、気分は高揚している。

▼オランダは運河の街。運がよくなくても、運河には巡り合える

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▼アムステルダム探索にはトラム(路面電車)が安くて便利
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夢にまで見た謎の美少女と、きょう出会えるからだ。
その少女はアムステルダム南西50キロ、ハーグの街で待っている。
アムステルダム中央駅からハーグ中央駅まで列車で約45分ほどだ。

徒歩でぶらぶら10分ほど歩くと、少女の住まいにたどり着く。
それがマウリッツハイス(Mauritshuis)美術館だ。
17世紀に建てられた瀟洒な建物。

マウリッツ伯爵の私邸を改装し、1822年にオープン。
この美術館の至宝がフェルメール「真珠の耳飾りの少女」だ。
入館料は12ユーロ。オーディオガイドは無料、日本語もあるのはうれしい。

美術館入り口で自由行動。
ウサギさんFちゃんMちゃん、それぞれの鑑賞スタイルがあるだろう。
私は誰にも邪魔されず、少女と向き合いたい。

▼マウリッツさんの家。左手にレンブラントの自画像があった

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広い階段を一気に駆け上がり、3Fの特別室に直行した。
オフシーズンのせいか、入館者の数は少ない。
対面を妨げる無粋な柵はない。

手を伸ばせば触れそうな至近距離で少女と対峙した。
こちらを肩越しに見つめる少女のミステリアスなまなざし。
見る者の心を惑わし、そして釘付けるする不思議な魔力を持っている。

青いターバンと後ろに垂らした黄色い神飾りも印象的だ。
この作品、44.5×39センチしかない。極めて小さいが、存在感は圧倒的だ。
その場に立ち尽くし、5分、10分と時間が過ぎてゆく。

この少女を我が物にすることはできない。
悔しいけど、写真撮影が禁止されているからだ。
フィルムカメラの時代はよかったなあ。

どこでも写真は撮り放題。
スペイン・プラド美術館でシャッターを切りまくったのは1993年のことだ。
世界的な至宝、ゴヤ「裸のマハ」「着衣のマハ」も規制なし。

▼「真珠の耳飾りの少女」。彼女は今秋、日本にやってくる

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デジタルカメラの普及が写真禁止に踏み切る端緒となった、
カメラ扱いに慣れてない人が、オートモードでフラッシュを光らせるからだ。
フラッシュの光は世界的名画に深刻なダメージを与えるのだ。

フェルメールの作品は、もう二つある。
その一つが「デルフト眺望」(96.5×115.7センチ)。
デルフトはフェルメールが生まれ、絵を描き、そして亡くなった街だ。

もう一つが「ダイアナとニンフたち」(97.8×104.6センチ)。
この作品はフェルメールの真筆ではないとする学者もいるが、
いざ絵の前に立つと、どうでもいいことにように思えてくる。

このほかレンブラントの出世作「トュルフ博士の解剖学講義」や晩年の「自画像」、
ルーベンスとヤン・ブリューゲルの共作「楽園のアダムとイブ」など、
見逃せない名画が目白押し。時間はいくらあっても足りない。

▼青と白のコントラスト、繊細な絵付けが美しいデルフト焼
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▼日曜日なのに、たった一人で絵付けにいそしむ女性職人
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▼絵付けタイルで原寸大に再現されたレンブラントの「夜警」
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2時間後、3人と再会。ランチをすませ、デルフトに向かう。
白とブルーが印象的なデルフト焼で有名なデルフト。
「デルフトの眺望」そのままの景色が今も広がる。

焼き物に興味のあるFちゃんお希望で、まずデルフト焼の工房へ。
あいにく日曜日だったが、運よく工房はオープンしている。
しかし絵付けの職人は1人だけ。なんとなく寂しい。

ショールームのハイライトはレンブラントの「夜警」だ。
絵付けタイルで寸分たがわず再現。もちろん大きさも1ミリも違わない。
なんと4.37×3.63メートル。その巨大さに圧倒される。

このオリジナルは明日アムステルダムの国立ミュージアムで鑑賞する。
ショップで記念の小皿を買って、デルフト旧市街へ。
フェルメールの痕跡を訪ねるのだ。

※著作権法に触れるため、フェルメールの作品は紹介出来ません。興味のある人はマウリッツハイス美術館HP をご覧下さい。

ヨハネス・フェルメール>17世紀オランダの画家。現存する作品は全世界で32~36点(研究者によって異なる)。代表作「真珠の耳飾りの少女」。昨年。京都と東京で「フェルメールからのラブレター展」が開かれ、大勢のファンでにぎわった。

■毎度おなじみ、役立たずクイズ(2)

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デルフト焼の工房で見つけました。
これに絵付けして焼き上げると、何になるのでしょうか。
大きさは50センチほどでした。

役立たずクイズ第1回解答>正解は(2)スケベニンゲン(Scheveningen)。今回訪問したハーグにあります。