屋根が重いと地震に弱いのか | 還暦建築士の日記:リフォーム百科事典

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屋根が重い家は地震に弱いのか?

 

「屋根が重い家は地震に弱いのか?」

この質問、耐震診断の現場でもよく聞かれる話です。今日はこのことについてお話ししたいと思います。

屋根が重いと本当に危険なのか?

 

耐震診断をする際、最初に考えるのは**「必要耐力」**です。つまり、その建物の床面積に対して、どれだけの強さが必要なのかを求めるところからスタートします。

 

屋根が軽い家と重い家では、この「必要耐力」が約3割も違ってきます。たとえば、屋根が軽い建物なら耐力が10必要だとすると、重い屋根の建物では13必要になるということです。こう聞くと、「やっぱり屋根は軽いほうがいいんだ」と思われるかもしれません。確かに、必要耐力が少なくて済むという意味では、軽い方が有利なのは間違いありません。

 

しかし、だからといって**「屋根が重い=地震に弱い」**とは限らないのです。

 

耐震性を決める大きな要素は、屋根の重さではなく、壁の強さです。

地震に対して頑張ってくれる**耐力壁(筋交いや構造用合板などを使った壁)**がしっかり確保されていれば、屋根が重くても問題にはなりません。

 

既存の住宅の耐震補強を考えるとき、「屋根を軽くしましょう」と提案する業者もいます。確かに、屋根を軽くすることは耐震性の向上につながります。しかし、ここで大切なのは、費用対効果です。

屋根を軽くするより、壁を補強するほうが効果的

 

仮に屋根を軽くする工事に200万円かかるとします。その200万円を使って、1階の壁を補強したらどうでしょう?

間違いなく、壁を強くしたほうが家は地震に対して強くなります。屋根が軽くなれば地震に対して有利になりますが、それ以上に壁を補強することのほうが「命を守る」という意味で効果的なのです。

 

だから、「屋根を軽くしないと危険ですよ」という言葉だけに惑わされてはいけません。地震対策として、何にお金をかけるべきかをしっかり考えなければいけないのです。

 

屋根の重さも確かに影響はありますが、最も大切なのは「壁の強さ」です。筋交いや構造用合板を使った壁を増やすことが、耐震補強の第一歩になります。

 

耐震補強を考えるときは、単に「屋根を軽くするかどうか」ではなく、家全体のバランスを見ながら、最も効果的なお金の使い方を考えることが重要です。

 

屋根を軽くするよりも、まずは壁を補強する。その基本を押さえておくことが、命を守るための本当の耐震対策ではないでしょうか。