父から受け継いだ精神
私の父親は内装建材や住宅設備機器の問屋を営んでいて、学生時代にアルバイトで仕事を手伝っていました。 その時に父から「売ってはいけないよ」と何度も言われました。問屋業なのに売ってはいけないとは? 私は父の真意を理解できませんでした。
その意味が分かったのは、大学卒業後に勤めた家電メーカーの販売会社での経験でした。新人でいきなり営業の現場に配属されましたが、ライバル他社のベテラン営業マンに対抗して新人が売れるほど甘い世界ではありません。訪問しても社長・店長さんに面談すらできない有様です。お客様の倉庫は、他社の商品が山積みで自社の商品が入る隙はありません。
その時、私に出来ることはなんだろうと考えて実行したのは、お客様の倉庫の掃除や整理や従業員さんの手伝い、時には店頭に立って接客もして他社商品でもお客様にとって優れていると感じたら躊躇いなくすすめました。自分の成績よりもお店の都合優先です。
そんな営業とも言えない日々が続くうちに、なぜか売り上げ成績が上がってきたのです。お店の店員さんが「田口の商品を売ってやろう」と思ってくれたのです。リベートも販促活動も一切なしで営業成績は社内のトップになりました。
父の「売ってはいけない」の言葉がわかったのはこの頃です。売るということは自分の都合です。お客様の立場に立って、必要なことをやっていれば売らなくても買っていただけるんだよ…。 この言葉は人生の宝物です。
その後、父の会社に入り私も建築の仕事をするようになりました。建築が好きだからと言うより父のもとで「売らない営業」を実践したかったからです。
30歳を過ぎて夜学に通い建築士資格を取り設計事務所を開設し、今に至っています。20年間一貫しているのは、自分の都合よりもお客様の都合。建築家としての知識や経験を積み重ねながらも、すべての答えはお客様自身の中にあると言う信念で仕事をしてきました。一生涯のお付き合いをさせていただいているお客様は500世帯を超えました。
今のリフォーム業界は、建築に携わる会社としての基本価値がない会社がたくさんあります。モノ作りの魂を捨てててしまったかのような商品を作るメーカーもあります。見せかけだけの付加価値でユーザーにアピールする会社が多いのは残念なことです。
田口住生活設計室として、既存住宅の維持改修のコンサルタントやセカンドオピニオン業務を行い関東圏以外からもお問い合わせをいただいております。また、NPOあんしん住まいサポートでは、一般ユーザー向けに「リフォームで失敗しないためのセミナー」を開催し、人生と住まいのあり方の最適解を求めるお手伝いをしております。
また、感動経営コンサルタントとして、人を大切にする会社作りのお手伝いも始めました。
1963年 昭和38年生まれ 56歳
一隅を照らす生きたかを実践し、座右の銘は「順理則裕」 理に順えば即ち裕なり です。