3度目に周に会った時

「ラブホテルでも構いませんよ」

タクシーに乗り込む直前、ちひろがさりげなく伝えると意外な答えが返ってきた

「俺、ああいうとこ苦手なんだ。ちひろはラブホテルの方がいい?」

「そうじゃなくて、シティホテルだと料金が高いんじゃ…」

「は?」

タクシーの中で揉めるわけにもいかず、ふたりはいつものホテルへと向かう

都会の夜景が見える最上階の部屋に入ると、周はベッドの上に腰をおろしてネクタイを緩めながら口を開いた

「ここ、前から良く使ってるから落ち着くんだよ」

「えっ?」

「去年の春に子どもが産まれてから、遅くまで妻に起きててもらうのが申し訳なくて…10時過ぎたら家には帰らないようにしてるんだ。まあ、月に1、2回だけど」

「でも…」

27歳、妻子のいる会社員が自由に使えるお金がどれくらいあるのだろう、とちひろは考える

「もしかして、水上さんって社長さんとかなんですか?」

「自分で会社を経営してるのかって?ないない、普通の会社員だよ。ただ、世間一般の20代と比べたら稼いでる方かもな」

「そう、なんですね」

「ホテル代なんてたかがしれてる。そんなこと気にせず、いい加減タクシー代くらい受け取ってくれると嬉しいんだけど?」

「…はあ」

家庭があるのに外泊をする理由はなんとなくわかったが

「でも、こんなことしてたら奥さんにバレるんじゃないですか?」

周の口から自然に妻や子どもの話が出たことに、ちひろは少なからずショックを受けた

「バレないよ」

周はちひろの手首を優しく掴み、自身の膝の上に横抱きにして座らせる

「あっ!」

柔らかい耳朶に唇を押しあて舌先でくすぐるように舐めたとたん、ちひろの体が小さく跳ねた

「妻は昔から、俺のことを馬鹿みたいに信じ切ってる」

「…最低ですね」

本音だったが、それは既婚者と知りながら水上に抱かれているちひろ自身に向けられた言葉でもある

「そう、最低な男だ。それでも俺に抱かれたい?」

ちひろは黙って頷くと、周の背中に回した両手に力をこめた


つづく↓