雨上がりの夏の夜に、ちひろと周が出会ってから5ヶ月が過ぎ

季節は冷たい北風が肌を刺す冬へと変わっていた

それでも、ふたりの逢瀬の回数は2桁には遠く届いていない

周がちひろの働くバーに現れるのは、決まって金曜日の午後8時過ぎ

ただ、その間隔は2週間の時もあればひと月以上空くこともある

「連絡先、交換しようか?」

なんどか周にそう聞かれたが、ちひろは決して首を縦に振らなかった

「そんなことしたら、絶対に奥さんに気づかれますよ」

「ちひろは心配性だな」

「水上さんが楽観的過ぎるんです。今まで通り、会えたら会うで良いじゃないですか」

つまりそれは

周がちひろの働くカクテルバーに来なくなるか、彼女が黙ってバイトを辞めたりするだけで、この関係が容易に終わることを意味している

どのみち最初から、長くは続けられないとわかった上での火遊びだ

だからこそ

これが最後かもしれない、という焦燥感にかき立てられ、会うたびにお互いを激しく求めあった

激しくーといってもセックスの最中、周はちひろをとても大切に扱った

乱暴な行為はもちろんこと、挿入も必ず避妊具をつけてからでないと行わない

口淫も自分からして欲しいと言うことはなく、ちひろが強く望んだ時でも決して飲ませたり顔にかけたりすることはなかった

やがて

優しく彼女を愛撫する温かい腕に抱かれると、ちひろは興奮と同時に深い安らぎを覚えるようになり

ホテルのベッドで抱き合ったまま、朝までぐっすり眠ることも増えてきた

窓から差し込む都会の朝陽を浴びながらルームサービスで朝食を取り、先にちひろが部屋を出る時

「じゃあ、またね」

掠れた声で言う周に、彼女は微かに笑みを浮かべて片手をあげる


そんなふたりに大きな変化が訪れたのは

年末も押し迫った、雪が降る日のことだった