朝が来ると、外の世界は冷たく透明な光に満ちていた


厚いカーテンの隙間から差し込む陽射しが、ベッドで並ぶふたりの輪郭をそっと浮き上がらせる


周は目を覚ますと同時にちひろの存在を感じ、しばらくその横顔を眺めていた


眠っている彼女の顔はあどけなく、昨夜の情熱的で大人びた様子は消え失せている


けれど


その裏側で拭いきれない罪悪感に囚われ、苦しんでいることも周は気づいていた


柔らかい髪を撫でていると、ちひろはゆっくり瞳を開けて寝ぼけた声で「おはよう…ございます」とつぶやいた


周は答えず、代わりにちひろの手を自分の手で包み込む



「寒い?」



その小さな手は、氷のように冷えきっている



「…少し、気分が悪いかも」



「えっ!?」



周は慌てて体を起こし、手のひらを彼女の額に当てた


「大したことありません」


たしかに熱はなそうだが、顔色は見る間に青白くなっていく


「病院に行こう、着替えられる?」


周が持ってきたニットのワンピースを受け取りながら、ちひろは小さく首を振る


「土曜日だから病院は開いてないんじゃ…マンションに戻って休めば大丈夫です」


「急患センターをあたってみるから、ちょっと待ってて」


着替えを済ませてスマホを手にした周の腕を、細い指先が力なく握る


「やめてください。タクシーを呼んでくれれば、ひとりで帰れますから」


必死に訴えるちひろの姿に戸惑いながら、周は一か八かの提案をした


「じゃあ、家まで送らせて。それがダメならここから病院に連れて行く」


「水上さん…」


「ひとりでなんか帰せるわけないだろ。どっちにする?ちひろ」


今までに見たことない真剣な周の眼差しに、ちひろは顔を覆ってため息をついた




つづく↓