「今やらなければならないこと」と「今いっちがやりたいこと」。

 あるいは、

 「親としてしてほしいこと(ピアノとかスイミングとか片付けとか)」と「いっちがやりたいこと」

 ここに違いがある場合、全くと言っていいほど、私たちの思い通りになりませんでした。

 



 考えてみたら当たり前の話なのです。この頃は「親と子ども」として接していたのです。

 我々は、いっちに遊べる場、学べる場を用意してあげることで、すくすく伸びていくものだと思っていました。

社会性が乏しいのも、一人目(当時)で専業主婦のはっはと過ごすことが多いからで、幼稚園に通ううちに磨かれていくものと思っていました。

 だけど、運動会・発表会を迎えて、つまずいてみて改めて実感しました。

この子は父や母の付属物ではなくて、小さくても独立した別の人格を持った人間で、周りに合わせたりすることは苦手なんだと。

 本人が楽しみにしていて、練習したからといって、そのまま頑張れるとは限らないし、一方で、頑張れなかったことに、いっち本人も苦しんでいるのだと。

 この子にとっての現実を、ありのまま受け入れる。とにかく、否定せずに行動を観察し、何を考えているのかを予想することにしました。

 そうしたことで、思い通りにいかないイライラは軽減されたように思います。このことは、臨床医として患者と関わる上でとても役に立つものでした。