02-01 二つのIMO、国際組織

先に進む前に、二つの IMO のうち、International Maritime Organization 国際海事機関の方から紹介したい。

こちら「海」の組織の IMO は、元は第二次大戦中の1948年に連合国間で発議された、IMCO =Inter-Governmental Maritime Consultative Organization 政府間海事協議機構が1982年に改称したもの。

さらに遡ると、1914年の最初の「International Convention for the Safety of Life at Sea (SOLAS) 海上における人命の安全のための国際条約」に遡る。この条約は1912年のかの RMS Titanic タイタニック号の惨状への反省から生まれたものだ。

因みに RMS は Royal Mail Ship の略で元々は、英国の Royal Mail の船便を請け負う船が誇り高くつけたもの。俗に言えば「御用達」の「郵船」だ。Royal Mailは英国国教会をつくったヘンリー8世の1516年に遡る。

国家的システムと郵便事業、国際的システムと郵船事業は密接不可分な関係にあり、NPOのようなもの、NGOのようなものを考察する上で、歴史的に重要なものだ。

02-02  郵政、郵船事業――NPOのようなもの、NGOのようなもの、「国」「際」とは

東インド会社のように,、政府そのものを請け負う特許会社が「ぎらつく」程ではないが、国家的規模の郵便事業はかつての日本での「郵政民営化」、或いは、ケビン・コスナーKevin Costner の「ポスト・マン The Postman 」を思い起こすまでもなく、多くのテーマが潜んでいる。一国内で限ったてみただけでも、「切手」といった「準通貨」、「郵便為替」といった準政府為替、特定郵便局といった準地方組織、といったことから、通信の自由、信書の秘密等々話題がつきない。

02-03 NPOのようなもの、NGOのようなもの、「国」「際」の始まり――災害救援、平時の「プロトコル」

そもそも、IMO の発端である SOLAS 条約は、
a.船舶には、全員が乗船できるだけの救命艇を備え、航海中救命訓練を実施すること
b.船舶には、モールス無線電信を設置し、500kHzの遭難周波数を24時間聴守する無線当直を行い、そのための通信士を乗船させなければならないこと
c.北大西洋の航路で流氷の監視を行うこと
d.船客の等級による救出順序を廃止すること
を決めたもの。
つまり、災害時、災害予防の国際的取り決め、無線通信の国際的プロトコルの嚆矢だ。

02-04 災害救援、平時の「プロトコル」――国際公共財、公海

海というものは、「国際公共財」のなかでも、「国際的」というよりは「無政府的」「国家間隙的」「国家の主権が無効」な「公共財」という、大きなテーマだ。

公共財とは非競合性もしくは非排除性といった概念で説明されるように、誰でもが際限なく享受できる、例えば「空気」のような財のことだ。

しかし、帰属や使用の自由があるといわれる公海は、一方において、私権も公権も及ばない、逆に、私権も公権も乱用し得るところだ。つまり所有者、管理者なき海、公海が大半の海では、否応もなく「NPOのようなもの」「NGOのようなもの」の存在を必然にしている。

現実的にも、陸地の2倍ある海を、仮に、各国の陸地割合に応じて応分配分すると、「国家」もしくは「国民」が守るべき、メンテナンスすべき、領土、国土が、今辛うじて維持できている、3倍のコスト、手間暇が掛かり、とてももたない。

その裏返しに。公海では、海底の遺伝子資源をトロール網で総浚いをするものや、放射性物質を廃棄するものなど、多くの深刻な問題が放置されている。

02-05 災害予防、平時の「プロトコル」――軽い人災・天災を治め、大きな人災・天災を防ぐ

残念ながら、人類に争いはつきもののようだ。価値観の多様性を認めることと、お互いに異様な価値観の存在とのバランスが崩れるとき、多くの争いが始まるのだろう。近代国家の機能の一つとして内部の「国民」同士の争いや、内部に侵入する他「国民」との争いを止めるための権威・権力・暴力が与えられているが、国の範囲、主権の範囲が国同士で認めない地域は勿論の事、主権が存在しない「公」海では難題だ。

02-06 軽い人災・天災を治め、大きな人災・天災を防ぐ――海洋及び海底地形名、地名、海図、地図

例えば、島の名称や島であるか否かが、世界でよく話題になるが、こうした問題の根幹では、国連の地名会議決議によって、

NPO、「 General Bathymetric Chart of the Oceans (GEBCO) = 大洋水深総図」の小委員会 「Sub-Committee on Undersea Feature Names (SCUFN) = 海底地形名小委員会」 と、

多国間の代表的な政府間組織(IGO intergovernmental organaization)の国連の傘下の「United Nations Group of Experts on Geographical Names (UNGEGN) =国連地名専門家グループ」との、

ワーキング・グループ「Working Group on Names of Maritime and Undersea Features (WGMUF) = 海洋及び海底地形名作業部会」 (1984年解散)によって、作成され、その後改定を重ねてきて、

「Standardization of Undersea Feature Names 海底地形名標準 GUIDELINES PROPOSAL FORM TERMINOLOGY 指針提案様式用語 Bathymetric Publication No.6 水深測量に関する刊行物6号 4th Edition, November 2008 第4版 2008年11月」が実態としての海の地名、呼称法の「世界標準」になっている。

https://www.gebco.net/data_and_products/undersea_feature_names/documents/b6_ej_ed4.pdf#search='working+group+Names+of+undersea+and+maritime+features'

02-06 国と国の間隙の軽い人災・天災を治め、大きな人災・天災を防ぐ――国際NPO、NGOの間に間に王族・貴族

この GEBCO には、アルベール一世、モナコの大公が設立に深く寄与している。欧州域内、ひいては、世界での「別」の形のガバナンスに、ひいては欧州、或いは、米国のNPO、NGOというものの発展に、日本では見落とされがちな重要な側面に、共和制に欧米各国が舵を切った近代以降も、王族・貴族たちによる「私的」な熱意や努力がいかに貢献しているかの典型例で、IOC国際オリンピック委員会、あるいは赤十字の二つの国際的組織などを含めて、仔細に紹介したい。

日本でも、明治以降の皇族といわず、例えば、施療院、施薬院など、古代に遡るセレブ、アリストクラットによる社会への「貢献」とパラレルかと思われる。

とまれ、「近代世界」の徴の一つといえるのが、権威、権力が、王族・貴族から市場の勝者へと、恩賜から貢献、チャリティ、フィランソロピーへと変わったことだろうか。

02-07 もう一つの全世界「的」な海の組織、もう一つのIOC

気象の問題に戻る前に、IMOに次いで、重要な世界的な海の組織に名称だけでも、触れておきたい。本部が IMO の本部ロンドンの隣のパリにある UNESCO=United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization 国連・教育科学文化機関の傘下の IOC だ。IMO が「海事」、人間の「航海」だとすると IOC は「海洋学」、「環境・生態」だ。国際オリンピック委員会と略称が同じだが、これは Intergovernmental Oceanographic Commission 政府間海洋学委員会の略称で、いずれ仔細を紹介したい。