中国の地勢、その5。
◆資料の揺らぎ◆中国史を頭に叩き込むための中国図作図の続きというおうか、脇道です。脇道とはいえ、あまりにも、根拠としたい「公式」資料によっての異同があり過ぎて、重箱を重ねるかのようなメモになってしまった。
脇道自体は、脇道とはいえ、前からイメージ化するため、個人的に作ってみたかったもの。
◆都の三次元平均◆以前から脇道として歴史的にみた「都」の平均的な位置を割り出したかった。位置は経度と緯度の二次元、それに歴史、つまりは時間、その経緯度に「都」が設置されていた年数という三次元目を加えた、歴史的な平均位置だ。予めお断りしたいのが、これは詐術的な論考であり、氾濫する情報を整理するための気休めだ。最後にその詐術の詐術たる所以の一端に触れておきたい。でも、全ての仮定や前提が前提であることを確認してみることができるならば、一理の理があるとは思っている。
◆都の重心◆そうした加重平均のような計算をすると⑪図に示した「北緯35°、東経113°」が歴代「都」の時空間的「重心」だ。
◆中国核心部の面積◆さて、勝手に決めた、中国の核心部、北緯20-40度、東経105-120度の面積は北に行くほど、経度間の距離が窄まっており、凸球面の一部ではあるが、凡そ台形であると考えることができる。上辺/北辺は1277.6㎞、下辺/南辺は1568.6㎞、高さは経度間はいずこも同じ1緯度あたり111.3㎞、の20緯度分で、222.4㎞なので、3,163,697㎢だと仮定できる。どうせ仮定なので、これを円周率、πの切りの好い倍数にあわせるため、少し(0.7%)下方修正して、3,141,592㎢としてみよう。
◆1,000㎞の円◆都合よく、ちょうど半径1,000㎞の円が中国の核心部、政治中心部の面積といえる。図式化すると、⑫図のようになる。
◆実際の現代中国面積との異同◆実は現代中国の実際の面積は、半径1,000㎞の円の3倍の9,424,775㎢より少し多い。実際の面積については、次に述べるように諸説あることもあり、大勢に影響はないと勝手に思っているが、後程記すように、中国の歴史を核心部で捉えていくという仮説と良く一致する。
◆中国国土面積の揺らぎ◆例えば、Wikipediaをみても、中国の面積は、はっきりしない。領有権の問題も含め、いくつかの項目間、各国語版間で異同がある。典拠がまちまちだからだ。これは中国に限らず、他の多くの国々も同じ問題を抱えている。
Wikipedia日本語版では、9,572,900㎢(ブリタニカ)、 9,596,9611㎢(国連統計局)㎢としていて、さらに、アクサイチン、カラコラム回廊、香港、澳門(マカオ)を含めるとそれぞれ、 9,640,011㎢、 9,641,145㎢らしい(備考欄が難解でよくわからない)。一方、典拠のない「中国行政区分の面積一覧」では合計が9,565,216㎢だ。
◆揺らぎは数パーセント◆一方、これまでの作図では台北を含めてきたので、これらに、台湾の36,188㎢を足すと 「典拠無し」:9,601,404㎢、ブリタニカ: 9,676,199㎢、国連統計局:9,677,333㎢。半径1,000㎞の円の3倍の9,424,775㎢に比べると、1.9%、2.7%、2.7%と、都合よく、それほど大きな違いはない。
◆日本の面積の揺らぎ◆因みに、国連統計局による日本の面積は377,972㎢、「一般財団法人国土技術研究センター」では377,971㎢、そして、外務省hp各国語版では「約378,000㎢」と「約」で表現している。内閣府をはじめ、中央省庁で、国土・領土の面積を探しても、北方や島々のことはあっても、全体について、しかも数字つきのものは見つからない。
中央省庁では、国土地理院の「全国都道府県市区町村別面積調」(H28年度)で積み上げた数字、377,971.57㎢しかない。平成27国勢調査(総務省統計局)にも積み上げ数字があるが、これは377,970.75㎢で、1.18㎢少ない。
◆日本の境界未定地域◆同調で「都道府県にまたがる境界未定地域」の合計は12箇所、12,780.26㎢にものぼる。全体の1/30だ。しかもこれは「都道府県にまたがる」もの。これ以外の各都道府県内の「市町村等にまたがるもの」は74地域、36,160.75㎢。合計、48,941.01㎢。実に12.9%が「境界未定地域」。
◆国家間の境界未定地域◆こうした「国内」事情を日本と比べて、中国の「国内」各省間に、どの程度抱えているか分からない。いずれにしろ、国内ですらこういった状態なので、人間社会、「国をまたがる」国家間の領有権問題、紛争、つまりは境界未定地域が数%というのも致し方ないものかもしれない。
◆在米日本大使館による日本の面積の不思議◆ところで、色々な「公式」サイトを調べたが、面白いのが、在米日本大使館だ。362,215㎢とある。
この根拠もさることながら、注に(slightly smaller than California)とある。ワイドショー解説ならともかく、日本外交の最大手の出先のサイトでの表記として、モンタナ州の38万㎢台の方が近いのに、カリフォルニア州は42万㎢台を比較基準にするのはどうかなあと思う。確かに州名の如く、山の多い州ではあるが、、、、
◆「本島面積」という由来◆因みに362,215㎢はインターネット上の総務省統計局の「 第六十五回 日本統計年鑑 平成28年」のうちにある「1-1 国土構成島数,周囲及び面積」の最右欄の「本島面積」の数字と一致する。積算をみると、北海道:77,984、本州:227,943、四国:18,298、九州:36,783、沖縄:1,207とある。
意図的なのかどうか、最右欄を引用しただけか、分からないが、不思議な引用だ。他の大使館等は外務本省と同じようなもので、在米大使館だけが独自で出色だ。
◆現代中国、半径1750㎞の円◆さて、脇道の中国に戻ろう。諸々ある中国の面積の数字の中間をとって、9,621,127㎢としよう。ちょうど半径1750㎞の円になるからだ。核心部の3.0625倍、凡そ3倍で都合が良い。核心部に、倍の大きさの周縁部が囲んでいるというイメージだ。
実は、このイメージは現実とよく符合する。図式化すると、⑬図のようになる。本当は右側、東側が膨らんだ、卵を横倒ししたような曲線が描ければいいのだが、、、、
実は、各省政府の提供する数字を典拠としている英語版Wikipediaの各省面積一覧での合計は9,634,057㎢で、これに台湾の36,188㎢を足すと、9,670,245㎢となり上記の半径1750㎞の円、9,621,127㎢と0.5%の違いしかなく都合よく一致する。
◆辺境州と核心部の割合、7:3◆さて、中国の大きい省は「国境」沿いだ。英語版Wikipediaから南のベトナムと接する「広西チワン族自治区」から順に朝鮮半島との国境までを9州を時計回りになぞると歴然とする。各省の面積順位、面積、全体に対する面積比(台湾を含まない)が次の通り。
9位 広西チワン族自治区 236,300㎢ 2.46%
8位 雲南省 394,000㎢ 4.11%
2位 チベット自治区 1,220,000㎢ 12.30%
1位 新疆ウイグル自治区 1,600,000㎢ 16.70%
7位 甘粛省 450,000㎢ 4.69%
3位 内モンゴル自治区 1,183,000㎢ 12.30%
6位 黒竜江省 469,000㎢ 4.89%
14位 吉林省 187,000㎢ 1.95%
21位 遼寧省 145,700㎢ 1.52%
合計が5,885,000㎢になる。
4、5位以外の面積トップテンが入っている。如何に中国が領土拡張の努力をしてきたか分かるが、逆に言えば、残りのたった4割が中国の核心部の側にあるということだ。
4、5位の州は国境沿いの西部の省の「中一つ」にある。西の国境州の内側東側にある青海省とそのさらに東側隣の四川省だ。後述することになると思うが、成都もあり、日本で辛い四川料理の名としてきかれる四川省の特異性がここにある。同じように北京も極めて北限に近い都市だ。青海省の722,300㎢を上記9州に加えると、6,607,300㎢で全体の68.5%になり、残りが3,062,945㎢で上記の半径1000㎞の円の3,141,592㎢と2.5%違いで、ほぼ同じだ。
◆詐術、もしくは詭弁◆最初に記した注意点だ。これは確率論とか統計論等にみられる理系と文系の狭間にある疑似科学的、詐術的な論述だ。
①詐法は無数にあるが、その一つであり、根本的かつ分かり易い詭弁は、空間も時間も一様であることを前提としていることだ。
②さらに、それらの時や空間が次元が交換可能な、しかも等価で交換可能な、次元であるように前提していることだ。それは理系では、比較的古くから不確かなことと受け止められているのに、未だに限定付きではあるものの、世間では依存し続けている「空気」の中にあること自体が問題の根源にあって、厄介だ。
◆人による、人のための、人の詭弁◆少なからぬ、一部の、文系では、未だに、軽く、迷信とまでいわなくとも、無前提な絶対前提のように使われている。同じ時間や空間と称していても、文系と理系を分かつのが、両者とも観測者は同じであっても、文系の観測対象が人間由来であることだ。そこからして時空間が歪んでいるのは明らかだ。
◆悪意による、悪意のための、悪意の詭弁◆その人為、その作為は人である以上、当たり前かもしれない。でも悪意をもって使われているとしか思えない使い方、都合の良い数字が溢れ、跋扈する世の中になってきた昨今、パラダイム・チェンジのときが訪れたのかもしれない。

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