ジユという女がここにいた。身分が違うと反対されていた恋しい人がいた。男の方が身分が上だった。王宮に努めているものだった。名前はミンジュンという。隠れて密会をしていた。やがて男には許嫁ができる。それでも二人はあっていた。
「ねぇ・・ミンジュン様・・明日もここであいましょうね」
「ああ」
約束だ。会う時は必ず付き人がランタンの灯りを目印にしていた。
月の出ていない夜にだけ二人は密会をする。
ジユの体調が悪くなり約束した日にいけなくなってしまう。それでもあいたいと切なくつぶやいている。
「旦那さま・・あいたい」
つっと頬を涙が流ていった。
「大丈夫ですよ」
お嬢様。体調がよくなればまたおあいになれますよという。しかしお嬢様は病のためにそのまま死んでしまう。
男は来ない人を待ち続けていた。許嫁ができても忘れられずに約束の日になるとその場所に立つ日々。
「どうして・・こない‥あの人は‥どうしたんだ?」
静かに赤い傘をさして牡丹の花びらを目印にして立つ姿を探していた。
「旦那様・・」
その時声をかけられる。振り向くと許嫁が立っていた。
「どうなされましたか?」
「いいや・・なんでもない」
あわてて言い訳を口にして彼女の元に戻る。
その後彼女と結婚をした男。それでもときどき思い出しては月を眺めている。