夜の事。ウンスの夢の中。
「こっち・こっち」
「どこにいるの?」
ここは彼女の見ている夢の中だわとわかる。
声が聞こえてくる場所に向かっていった。
見知らぬ場所に立っていた。草原?違う。ここは水の上。気が付くと私は水のなかに落とされていた。
苦しい。もがきながらあたりを見回す。ナラの姿も子供の姿もない。別の空間に落とされた?
「っ助けて」
手がむなしく水をかく。自分の体は水の底へ沈んでいく。手をつかまれる。そのまま誰かに引き上げられた。
げほげほ。激しくせき込んでいると背中を叩かれる。
「だから‥言ったのです」
首をつっこむなと。
どうしてここに隊長がいるの?
「そうではありません」
ここは俺のみている夢の中なのです。さむいさむい世界。一面・氷の世界だった。震えていると肩をひきよせられる。
「道に迷うと夢から出られなくなりますよ」
夢の中ではいつもつながっているんです。出口はあっちです。背中を優しく押し出された。
帰りの道の途中でその子供を見つけた。
「わたし・・ここにいるの」
オンマ・・たすけて・・はやく迎えにきて。約束したでしょう。
そのこは湖の中に沈んでいたのだ。ナラさんの記憶にはない。遠い昔の出来事だった。