買い物へいく。夕方になっていた。人はまばら。
「化粧は女にとって必需品よ」
「意味が分からない」
ヨンはいう。うっすらと口紅をつけている。色のついた唇に目を向けていた。
「何よ?」
店の中で死角を発見した。防犯カメラの位置を見ている。
「ああ・・そういうこと」
カメラにうつったらまずいものね。あなたは。うんとウンスは納得。
非常階段のところまで連れていかれた。色のついた唇を親指で乱暴にぬぐわれた。びっくりした。
「いきなりなにをするのよ」
油断をしていたらそのまま唇を甘くかまれた。
「むぐ」
はむ・はむ。たわむれのようなキスだ。本気ではない。いつもはもっと激しい。
「どうしたの?」
「少しだけ」
耳元にささやかれる。目は違う場所を探している。仕事モードらしい。人が通り過ぎていく。
息が乱れてしまう。とんとんとあやすように背中をなでられた。
「いきなりだったから」
「ああ・・ごめん」
いこうと手を引かれて耳にイヤホンをとりつけた。
「おい・・不埒者」
しっかり見えていたぞ。誤魔化しておいてくれ。叔母さん。
「これからどこにいくつもりだ?」
「化粧品売り場?」
ウンスに目を向けるととられてしまった口紅を塗り直している。
扉を開けて店の中に進んでいった。
化粧品売り場では新作が出ているということで皆が集まっていた。報道陣もいる。これではヨンはいけない。
「一人でいってこい」
「ヨンは?」
適当にいるといった。カードを渡される。これで買ってこいと。
「さすがに・・」
自分の物を買うのだ自分の金で買う。カードは返す。
ヨンは待っている間にスマホでニュースを見ていた。あの弟が報道している。
「お待たせ」
「次は?」
ウンスはヨンの手元を眺めた。
「ああ・・ニュースになっている」
「有名か?」
うん・そのバッグね。窃盗事件にもなったって聞いたわよ。大学でも噂してた。