キ・ジェミョンの視点から。
一人になり誰もいないことを確認した。さっそく電話をかける。
「もしもし・・あなたの財布を拾ったものですが」
そうです。免許証と身分証が入っていまして。場所を伝えるので取りにきてもらえますか?仕事中でしてね。
「わかりました」
あいそうよくふりまい声をつくりあげていた。ここからが始まりだ。
しかけは単純。ただマンホールのふたをあけておくだけいい。あとは標的が勝手に落ちるように誘導するだけ。
ここには誰もこない。さみしい場所だ。その時だ。見知らぬ人とぶつかった。はっとする。財布を取られた。
「まて」
それがないと困る。慌てておいかけていく。すりのプロの仕業か。あちこちに逃げ込まれて見失った。
「どうする?」
しかしそれがなくてもスマホで操作すればいい。時間を確認する。
「まだ・・時間はある」
待ち合わせ場所で、待つことにしたがそいつはやってこない。
「どういうことだ?」
時間は過ぎている。
そのころ。公安に頼まれたスパイが財布の持ち主にかえしていた。
「これでしょうか?」
「ああ」
たすかったよ。それじゃとかえっていった。
すれ違うまで待つ。スパイはとある人物に連絡を入れる。
「任務終了」
「ああ」
了解それだけ伝えて電話は切る。
失敗した男は次の作戦に切り替えるだろう。まだ事件は終わってはいない。
「はぁ‥ウンスに逢いたくなったな」
ヨンが帽子の陰で星を眺めてつぶやいた。