略式でいいので縁だけは結ばせてあげようと皆が願う。王と王妃の優しさだった。何も覚えていないウンスだったが心よりそれを願っていたのはわかった。

「やっと・・やっと・・ここまでこれた」

心の中にいるもう一人の自分が確かにそういう。

 

ありがたいお経と縁を結ぶためのお酒を二人で分け合い飲んだ。

「そして・・こちらを」

お寺の住職さんがウンスとヨンの手首に数珠をもたせてくれた。

これで二人の縁は永久に結ばれたという。

 

ずっと用意してくれていたのだとわかる花嫁の赤い衣装。それを身に着けて隣に正装姿で立つ夫となった男を見上げた。じいと視線を感じた。

「どうか?」

似合いませんか?耳元近くに顔を寄せるとささやく。

「とてもよくお似合いです」

 

住まいについてだがどうするつもりだ?ヨンは仕事が忙しいのでなれるまでは離宮に住むという。

「夜に・・話したいことがあります」

「はい」

ウンスは顔を朱色に染めていく。

 

本当に簡単に済ませてきてしまった。何日もかけてする婚儀だというのに。半日で終わりにさせてしまったのだ。参加者は叔母一人というさみしいものだ。それが二人らしさでもあった。

 

次は初夜である。

 

「帰りがはやいな」

「すみません」

無事に婚儀はすませてまいりました。報告だけしてすぐに退出するつもりでいた。引継ぎなど兵舎ですませて一応報告だけはしておく。

「今日・・ウンス殿と婚儀を済ませてきた」

今後・・そのつもりで頼む。いうだけいい去っていく。ええ?皆が叫んだのはいうまでもない。