ウンスは医師として旦那様と奥様と若君のいる屋敷に通うことにした。見るたびに大きくなっている。しかし奥様は体をおこせる日は少ない。体調のいい日にはヨンの世話をしていた。

「だっこしてあげてください」

わたくしはもうできそうにありません。先生にあとでお話があります。かわいいかわいい小さなヨン。

「きゃいきゃい」

ころころとウンスの腕の中で動き回る。いつまでもここにはいられないが心配がつきない。

 

ウンスは一度外の空気をヨンに吸わせてあげようと席を立った。

「ねぇ‥ヨン・・」

「きゃい」

よく覚えておいてね。母君さまのことも父君さまのことも。これからたくさん辛いことがまっていることでしょう。それでも今はあなたには笑っていてほしいのよ。

じとウンスのことを見つめてくるのでよしよしとゆらす。嬉しそうに笑った。ヨンは昼寝の時間となって奥様のもとに戻した。

 

「奥様もお休みください」

若君のことは私がみていますので。

「いいえ・・今日は本当に気分がいいのよ」

華奢な肩には織物をかけてあげた。姿勢を正す。話を聴こうと思う。

「それで‥お話とは?」

「わたくしは長くは生きられないのでしょう」

「それは・・」

いいの。それよりもこの後の事。ヨンと旦那様のことが心配なのよ。あなたに頼んでいいかしら?

「すみません・・それはできなないのです‥私は帰りを待っている人がいるんです」

「いつ?いつ帰るの?」

わかりません。帰りたいのです。あの人の元に。でも小さなヨンも見捨てることもできない。

 

まだまだ小さいのだ。できることをしよう。せめてヨンが7歳になるまで母君が生きられるように。栄養をつけさせて動けるようにさせてあげたい。体調のいい日はヨンと散歩もさせてあげたい。そして叔母さまにもよくよく頼んでおこう。

 

そして母君とお別れの日にまたここへ来られるように願おう。天門にも意志があるように思う。強く・一途に。