それはこの地に訪れて初めての雪をみたウンスの話。
「わぁ・・寒いと思ったら・・ユキだわ」
チャン侍医が温かいお茶をそそいでくれた。
「ありがとう」
「体が温まります」
ゆっくりと飲んでくださいという。部屋で大人しくなどしてられないウンス。隊長に用意してもらった外套・手袋を身に着けていく。一面銀世界だった。吐く息さえも白い。庭に出てみる。どこもかしこも真っ白い雪に覆われている。
昔子供の時に作ったあれをしてみたくなる。
夢中で遊んでいると隊長がそこに立っていた。
「あなたはそこで何を?」
あきれた顔をしている。
「チェさん・・」
頬が冷たく顔色も悪いように見える。
「部屋に戻りますよ」
冷たくなった顔に手を伸ばすと自分よりも冷えていた。
「あと少し」
ふとみればそこかしこに見たことのないものができていた。
「これは・・何ですか?」
「雪だるま・雪うさぎよ」
かわいいでしょう。そんなことはどうでもいい。すぐに部屋に戻り体を温めねば。体を壊す。この人はときより子供のようなことをする。自分より年が上のはずだというのに。
「やだ・・もう少しで完成するの」
「いけません」
無理やり部屋に戻して着替えをさせて温かなお茶を用意してやる。世話の焼ける人だ。
「いせんどの・・」
「なぁに?」
すねているなこれは。体が温まればその・・ユキ遊びとやらにつきあってもいいですよという。わかりやすく顔がぱぁとなった。
「いいの?忙しいんじゃないの?」
「みてください・・そらから雪が降り出してきました・・これでは鍛錬になる前に風邪をひきます」
兵舎に戻りそこで体を動かすのだという。