喫茶で飲み物を堪能したあとのこと。次は辛いものが食べたくなったウンス。あちこちで歩いていた。のちにそれがヨンの耳にはいることになるとも知らずにだ。
「ウンスさん・・お知り合いにあわないようにしてください」
「わかっている」
変装もしているし大丈夫とのんきにいう。
サングラスに帽子。逆に目立っていますというべきだろうか。チトセは悩む。
キムチは現代でしか食べられないものねと食べていく。
「ウンスさん・・ヨンさんへの対策は考えていますか?」
夜には間違いなく帰ってきますよ。その前に帰ってきそうだったが。
「チトセさんの考えは?」
特に思い浮かびません。私はあきめたわ。いろいろ考えてもすぐにばれると思うのよ。ウンスさんが言います。
「そこで今のうちにやりたいことをしておくの」
ねぇねぇ高麗に一つぐらいならもって帰ってもいいわよね。
「まぁ…消耗品ならいいのではありませんか?」
「口紅にしましょう」
桜色に染まる紅を一つ買ってラスボスにそなえることにした。
しかし考えは甘かったのだ。好きなことをしてご機嫌になっていたが鬼がそこに仁王立ちをしていた。
逃げようと回れ右をする。
「どこへいくつもりですか?」
ひさびさに聞く敬語に身震いを覚えた。
振り返ってみよう。腕を組んだ現代のヨンが立っていた。眉間にしわをよせている。
「ひっ」
「夫を見て悲鳴をあげるとはいい度胸ですね」
にこりとほほ笑みを浮かべる。さらに怖かった。
「チトセさん・・助けて」
「無理です」
私は傍観者に戻ります。逃げることにしたずるい人だ。
「ただいま」
「おかえり」
ウンスとさっと肩と腰に腕が回された。逃げられない。